セルフマネジメントの時代~生徒のライフデザイン力を育む(8) 「問う力」磨く機会を

プロジェクトイニシアティブ代表取締役 藤田 勝利

通信技術の進化、IT機器の普及、働き方改革、副業解禁などにより、世の中では大小さまざまな「イノベーション」や「新事業」が生まれている。

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が著した『ライフ・シフト―100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)を通じて「人生100年時代」という言葉が注目されたこともあり、「学業、就職、定年退職」という従来の固定化された人生設計が見直されている。

社会人になっても、自らを常に再教育しながら時代のニーズに合った技能を高め、新たな価値を提案して対価を得る、起業家的な生き方が現実的な選択肢になっている。

私も自著で「必要なのは、イノベーションと起業家精神が日常的で、どこでも誰でも当たり前に、絶えず行っている『起業家社会』である」(『英語で読み解く ドラッカー「イノベーションと起業家精神」』ジャパンタイムズ)と示した。

新事業といっても大規模である必要はない。2、3人で起こす小規模な事業でも、組織の中で個人事業主的にプロジェクトを率いる働き方でも、顧客が求める新しい価値が生まれればイノベーションである。イノベーションが求められる社会の流れは、今後の学校教育現場にも確実に影響を与えるはずだ。

これから求められるのは、与えられた問題を解く力ではない。「問題(問い)自体を自ら創り出す能力」だ。「ビジネスを通じて社会保障費を削減する方法は」「スマホ技術を活用して、国内の教育格差を埋める方策は」「育児をしながら企業で活躍し続けられる仕組みをつくるには」など、自ら問いを設定し、それに創造的に答えることで新しい事業機会を生むのが起業家だ。実際、優れた起業家や経営者は皆、質問上手である。

私は大学の教え子たちに「授業や講演を聴く場合は、常に『質問』を考えながら聴け」と伝えている。質問を考えることで、話し手の知を自らの知と統合できる。

残念ながら、現代の学生の多くはこの質問を創ることが不得手だ。検索エンジンで答えがあっという間に手に入る世界に生きているからかもしれない。

「問う力」を磨くことこそが、新しい事業アイデアを生むための必須条件だ。学校現場は子供たちの質問力を刺激し、どのような質問もオープンに受け入れながら、答えを探させる環境であってほしい。