赤堀教科調査官(道徳教育)に聞く 校長のリーダシップがカギに

今年3月に告示された学習指導要領の一部改正に伴い、「特別の教科 道徳」(道徳科)が、今年度から移行措置として、一部または全部の実施が可能となっている。小学校で平成30年度から、中学校で31年度から全面実施となり、検定教科書が使われる。文科省初中局教育課程課の赤堀博行教科調査官(道徳教育)に、指導方法や評価の在り方について聞いた。

――あらためて「特別の教科 道徳」(道徳科)の教科になった経緯を。
道徳の教科化についてはこれまでも議論された。今回は、大津のいじめ事案をきっかけに、教育再生実行会議の第一次提言で道徳の教科化が示された。これを受け文部科学省は道徳教育の充実に関する懇談会を設け、道徳教育の諸課題について検討し、文部科学大臣に報告した。大臣は、道徳に係る教育課程の改善等について中教審に諮問し、中教審は道徳教育専門部会を設置して審議し、平成26年10月に答申した。これにより、学校教育法施行規則の一部改正、学習指導要領の一部改正が行われ、今年3月に告示された。

例えば、小学校は、昭和52年の学習指導要領の内容が、平成元年で重点化された経緯がある今回の改正で、52年の内容で再掲されたものもある。低学年では、いじめ問題について、誰に対しても同じように接するように「公正公平、社会正義」や、グローバル化を背景に「国際理解、国際親善」の項目などがある。3、4年生には、自分と異なる意見を大切にするように「相互理解、寛容」「公正公平、社会正義」がある。

――指導のポイントを。
学習指導要領では、道徳の時間と道徳教育があり、道徳の時間を要として行うことが明文化されたのが平成20年。学校の道徳教育については、どのような子どもを育成したいのか、学校が明確化する必要がある。教育活動は学校によって異なり、学校目標も違う。だから、道徳は難しい。学校がきちんとした方針を決め、それに合わせて教員が指導していかないといけない。全教員が一緒に同じ方向を向かないといけない。それには校長のリーダーシップが重要だ。

また道徳教育の授業については、5、6年生では22項目ある。それを週1回、年間35時間で指導する。学校ごとに指導内容が違うので、残りの13時間が重要。「親切、思いやり」や「友達、信頼」など、学校の創意で指導できる分、難しいのが道徳。だから、教員があいまいな指導をしてはいけない。

学校が示した重点目標に沿った年間計画を作り、実行する。子どものためにと、その都度起こった出来事を事例に挙げ、道徳授業をする教員が少なくない。授業の導入で身近な問題を挙げるのはよいが、それだけを扱うのはよくない。まとめると、道徳教育は「急がば回れとの教育」と「鉄は熱いうちに打てとの教育」がある。道徳の時間は前者で、広い意味での道徳的実践の指導としてその場で指導するのが後者だ。そこをきちんと区別しないといけない。

――今回の学習指導要領の一部改正では、「読み物道徳」から「考える道徳」へと転換を図った。その意図は。
「読みもの道徳」は、教材の読み取りに終始するような授業。決まりきったことを言わせたり、書かせたりと価値観の押しつけになっている授業もある。「考える道徳」では、さまざまな事象を児童生徒自身が自分の問題として考え、議論するものだ。教員が何を考えさせたいのか、しっかりとした目的意識をもつことが必要だ。
つまり、児童生徒自身がそれぞれもった考えを議論し、友達のいろいろな考えと出会う。これにより、違いを知り、自分の考えを深める過程を経ることである。こういう主体的、能動的、協働的な学びが重要であり、まさにアクティブ・ラーニングということである。

――「考える道徳」での「葛藤」の問題は。
問題を投げ掛けるだけでなく、教員がどんな葛藤場面を設定するかが大切だ。例えば、「親切」の問題を取り上げた場合に、親切は大事だとの一方で、老人に席を譲る場面で、断られるケースも想定し、「こうしたときにどう思うのか」。親切についても多面的、多角的な見方があるのを考えさせる必要がある。

――評価の在り方ついては。
改正学習指導要領では、学習状況と道徳性に係る成長の様子を、しっかり見るとなっている。個人内評価として見ていくというものだ。評価をしっかりとやっている人は、今日の授業で何を考えさせたいのか、どういう学習が必要なのか分かっている。そういう教員は明確な指導観をもっている。自ずと学習状況の視点が定まっており、子どもの成長が分かる。学校全体としてどういう子どもを育てたいのか。どういう指導をしたらよいのかを明確にし、それに合った「PDCAサイクル」を構築しないとだめ。これができないと道徳教育はできない。

――平成30年度から道徳科が全面実施され、検定教科書が使われるが、副教材の扱いは。
各自治体が教材集などを作っている。それらも大切に生かしていこうと明記されている。検定教科書を中心に副教材を使う場合もあるのではないかと思う。

――最後に、道徳教育を通じてどういう児童生徒を育てようと。
例えば、いじめの問題が起こったときに、そのいじめている子には多くの要因が隠れている。「相手に対する思いやりがない」「違う意見を受け入れられない」など、いろいろな道徳的価値が関わっている。だから、さまざまな道徳的価値を授業で学ぶ。そういったものを、将来、子どもたちが駆使して、答えが一つではない問題に対して自分で判断できるようにする。その力をつけるものが道徳の授業である。