明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富 祥彦
私の専門は、心理カウンセラーです。ひとさまの悩みをお聞きして、一緒に考えていく仕事です。さまざまな人の悩みを聞かせていただいてきました。
心理カウンセラーも、弁護士も、人を助ける仕事です。医師も、看護師も、福祉の仕事の従事者も、人を助ける仕事です。学校の教師もそうでしょう。
こういった人を助ける仕事のことを「対人援助職」といいます。
教師も、人を助ける仕事です。教師も「対人援助職」の一つなのです。
そして、ここに挙げた「対人援助職」の共通の職務、共通に求められる「資質・能力」は、「人間関係力」であると私は思います。
教師も、弁護士も、心理カウンセラーも、「人間関係のプロフェッショナル」でなくてはなりません。 では、「人間関係のプロフェッショナル」とは何でしょうか。 相手がどんな相手であれ、瞬時にして、リレーション(気持ちと気持ちのつながり、こころとこころのふれあい)をつくることができる、という意味です。
教師は、リレーション形成能力を相当に高めていく必要があります。 なぜか。
教師は、絶えず、人と接する仕事だからです。
授業や行事などで、子どもたちと接する。
保護者と対応する。
同僚と協力して、チームワークを築いて協働する。
絶えず、人と接し続ける仕事なのです。
相手が、自分と相性の合う相手であれば、関係をつくることができ、相性が悪いと、関係をつくることができない。これでは、アマチュアです。プロとは、いえません。
どんな子どもとであれ、保護者とであれ、どんな人間であるかにかかわらず、ぱっとリレーションを作ることができる。
どんな人が、同じ学年の教師になっても、ぱっとリレーションを作ることができる。
そんな教師になってほしい。
この連載では、そのための具体的なヒントを伝えていきます。 抽象的な理論ではなく、具体的にどうすればいいかを示すつもりです。
教師の同僚性の低下が指摘され、教師同士の人間関係の在り方が問われている。また教師と児童生徒、教師と保護者などの関係にも、多くの問題が指摘されている。教師がどのような人間関係を築いていくかは、わが国の学校教育を進めていく上で、ひとつの重要なカギであるといっても過言ではない。そんな中で、諸富祥彦明治大学文学部教授による「教師のための人間関係づくり」と題した新連載を始める。教師の人間関係および人間関係づくりのスキルに造詣の深い同教授が、人間関係に悩む教師に、大きな示唆を与えてくれる連載となる。月1回掲載する。 (編集局)