【連載】教師のための人間関係づくり 第2回 何を言うかよりも、どう伝えるか

明治大学文学部教授、教師を支える会代表 諸富 祥彦

 

わたしは常々、「教師は教科指導のプロである以前に、人間関係のプロでなくてはならない。コミュニケーションのプロであるべきだ」と言ってきました。

子どもとの対応、保護者との対応、同僚や教師とのチームワーク……、いずれの場面においても、人間関係やコミュニケーションの技術が問われるからです。では、人間関係のプロ、コミュニケーションのプロである教師は、そうでない教師とどこが違うのでしょうか。

それは、一言でいえば、「何を言うかよりも、どう伝えるか」が重要であることを理解し、工夫を行うことができている点です。

教師は「自分が何を言うべきか」で頭がいっぱいになりがちです。「正しいこと、大切なこと」を言えば、それは当然相手に伝わると思っているふしがあるのです。  しかし、いくら「正しいこと、大切なこと」を声高に語ったところで、それが相手に伝わらなければ、どうにもなりません。

「何を言うかよりも、どう伝えるか」

「話す内容以上に、言い方が重要」

こうした認識があることが、コミュニケーション能力の重要さを教師が分かっている、ということです。頭では、あるいは、本を読んでいるときなどは、「コミュニケーション能力が大事」と言いながらも、何かを話し始めるとそれで頭がいっぱいになり、「どう伝えるか」に気が回らなくなる教師は、実際には、コミュニケーションが重要だということが分かっているとはいえないのです。

例えば、最近問題になっている、子どもにほとんど手をかけず、食事もまもとも与えていない保護者に接する場合を例にとって考えてみましょう。

教師としては、「とにかく、もっと子どもの面倒を見てほしい。食事の用意くらいしてほしい」という内容のことを保護者に伝えたいわけです。

しかし、教師によってこの内容をどう伝えるかは、まったく異なります。

ある教師は「食事もまともに与えないなんて、親として、いかがなものでしょうか。養育放棄ではないですか」と非難します。

こうした伝え方をしてしまうと、保護者によっては、自分の心を傷つけられたと感じ、教師に対する反感を強めてしまいます。怒りでいっぱいになった母親は、帰宅後「あなたのせいで、お母さんが先生に叱られたじゃないの!」とお子さんを罵倒したり、体罰を加えたり、といった行動にでかねません。

こうなると、教師と保護者の関係がねじれるだけでなく、不満を抱いた子どもが翌日教室で暴れて、学級の荒れにつながる、といったことにもなりかねません。

もし「伝え方のうまい先生」であれば、どうしたでしょうか。

まず、学校まで来てくださった保護者の苦労をしっかりねぎらい、お子さんのいいところ、かわいいところを上手に伝えるでしょう。「いい関係」が築けていなければ、どんなことを言ったところで、伝わりはしないことをよく分かっているからです。

その上で、例えば、「もしお母様がおにぎりをつくっていただければ、まさおくん、すごーく喜ぶと思いますよ」と、保護者の自尊心を傷つけないようにうまく配慮して伝えるようになると思います。「菓子パンをひとつ、買っておくだけでもいいと思いますよ」と、その保護者の実情に合わせて、無理なく実現できる提案をすることでしょう。すると、保護者の気持ちも動くかもしれません。

相手の心に素直に届く「上手な言葉の伝え方」を工夫しましょう。

大切なのは、「どんな内容のことを言うか」よりも「どう伝えるか」です。

同じ内容のことでも、その伝え方次第で、人の気持ちを開くこともあれば、逆に閉ざしてしまうこともありえます。

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