【連載】教育現場の課題をひもとく 道徳から「特別の教科 道徳」へ④ 生き方に言及する「考える道徳」

東京家政学院大学教授 長谷徹

一部改正された学習指導要領で、これまで広く使われていた言葉で消えてしまったものがいくつかある。道徳的価値の自覚、補充・深化・統合、道徳的実践力である。

道徳的価値の自覚については、これまで(1)ねらいとする道徳的価値についての理解(2)自己の生活との関わり(3)自分なりの思いや課題を培うこと――の3つの要素が含まれるとされていた。改正された指導要領の目標を見ると「道徳的価値の理解を基に自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え」(中学校は〝物事を広い視野から〟が含まれる)とされている。示されている内容について表現は少し変わったが、これまでの道徳的価値の自覚と同様なものとなっている。

新たに加わったものは「多面的・多角的に考え」とある部分である。これは、さまざまな視点から自己の生き方や人間としての生き方について考えることを示唆し、自分なりの課題を考えるときの視点の多様性を示しているものと考えられる。したがって、これまでの道徳的価値の自覚に含まれる内容と、大きな違いはないと考えられる。

補充・深化・統合については、学習指導要領の目標からは消えたが、第3の「指導計画の作成と内容の取扱い」の2の(2)で「各教科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育としては取り扱う機会が十分ではない内容項目に関わる指導を補うことや、児童や学校の実態等を踏まえて指導をより一層深めること、内容項目の相互の関連を捉え直したり発展させたり」(中学校も同内容)とされており、目標からは消えたが、内容そのものは押さえられているのである。

道徳的実践力については、これまでの解説書では「道徳的実践力とは、人間としてよりよく生きていく力であり、一人一人の児童が道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め、将来出会うであろう様々な場面、状況においても、道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し、実践することができるような内面的資質を意味している。それは、主として道徳的心情、道徳的判断力、道徳的実践意欲と態度を包括するものである」(中学校も同内容)と解説されている。

新しい解説書では、このことについて、第2節道徳科の目標の「3 道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度」の中で「一人一人の児童が道徳的価値を自覚し、自己の生き方についての考えを深め、日常生活や今後出会うであろう様々な場面、状況において、道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し実践することができるような内面的資質を意味している」(中学校も同内容)とされている。表現は簡潔になったが、内容的には大きく変わるものではなく、道徳の時間の指導や「特別の教科 道徳」において育てたい子どもの資質は、どちらも内面的資質である。

しかし、ここで留意したいのは「日常生活や今後」という言葉が加えられたり修正されたりしたことである。これまでの内面的資質は「将来出会うであろう」というように、すぐに変容を求めているものではない。極端に考えれば、年単位での変容を求めているとも考えられるが、日常生活や今後ということになれば、最も早い段階を考えれば「授業が終わったら」といったことも考えられる。

このことについては、これまでも「自分なりに課題」を考えることにより、その課題の解決に向けての自分なりの考えや意思を明確にすることも授業の中では取り組まれていた。

いわゆる決意表明ということではなく、また懺悔の道徳でもなく、一歩自分を前に進めるための考えや意欲をもたせることは、これまでも多くの教師が取り組んできたものである。遠い将来だけではなく、これからの生き方について言及することも「考える道徳」では必要なことであろうと考える。

関連記事