【連載】教師のための人間関係づくり 第5回 保護者のクレームから自分を守るコツ

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富祥彦

 

○ボロボロになって退職

「モンスターペアレント」などと呼ばれる難しい保護者とどのように関わっていけばいいのでしょうか。厳しいクレームを受けるうちに、教師自身のメンタルヘルスを保てなくなり、ボロボロに傷ついてしまうことが少なくありません。うつ病になって退職される方もおられます。

これでは、せっかく教師になったかいがありません。では、どうすればいいか。  クレーム対応のコツを具体的に示すと……。

(1)とにかく、チームで取り組むこと。とりわけ、若い教員をひとりにしないこと。  (2)クレーマーは自尊心が傷ついている方が多いので、「おもてなしの姿勢」を大事にすること。文句を言いに来た相手に対しても、お茶とお菓子を出して、来校した保護者よりも少し多い教員で対応し、相手の身になってお話をよく伺うこと。 (3)携帯電話や自宅の電話番号、住所などを保護者にできる限り知らせないこと。喫茶店などでは会わずに、あくまで学校の中で一定の時間の枠を定めた上でお会いするようにすること。

以上の点です。これらは技術的な点です。

○自分を大切にしてほしい

それ以上に、私が、月に1回行っている「悩める教師を支える会」などで、先生方の悩みの相談にのっていてまず思うのは、「とにかく、自分を大切にしてほしい」ということです。保護者のさまざまなクレームや非難に対応しているうちに、心身ともにボロボロになっていき、教師を辞めていく。そんな先生方のお話をうかがっているうちに、この先生方を少しでも守ることはできないだろうかと思い始めたのです。  一番大切なのは、いくら大変になっても、「時間と食事だけはきちんととる」ことです。教師生活を健康に続けるうえで、睡眠時間の確保ほど大切なことは一つもありません。

○12時間続いたクレーム

なかでも教師が追いつめられるのが、「しつこいクレーム」です。1回で済むなら、多少きついことを言われても大丈夫。多くの先生方は、しばらくへこんでいても、元気な子どもたちと関わっているうちに、エネルギーを取り戻していかれます。けれども中には、保護者からのクレームによって、しばらく回復不可能なまでに調子を崩される方もいます。  しつこいクレームには、2種類あります。

1つは、長時間にわたるクレームです。私がうかがった中で最も長時間のクレームの被害者は、ある小学校の教頭先生。夜の8時に文句を言いにきた保護者の方が帰られたのは、なんと翌朝の8時だったといいます。実に12時間!

もっと悪質だと思ったのは、ある若手の女性教師の自宅に、保護者が毎日のように押しかけ、深夜の3時ごろまで居座って、文句を言い続けたという例です。長時間にわたるクレームを聴き続けるだけでも疲れてしまうはずですが、連日のように自宅まで押しかけられるとなると、たまったものではありません。

○個人の連絡先は絶対に教えない

2つ目は、何度も繰り返されるクレームです。ある小学校のファクスに15分ごとの苦情がなんと半年間も寄せられたという例をうかがったことがあります。携帯電話や自宅の電話に保護者からの苦情が毎日のように寄せられ、精神疾患になったり、家庭が崩壊に追い込まれたりしてしまうケースも少なくありません。

致命的なダメージを負った先生に共通するのは、「自宅の住所や電話番号、携帯電話の番号を教えてしまったこと」「ひとりで抱え込んでしまったこと」です。また緊急連絡網という理由で、保護者に自宅の住所や電話番号、携帯番号などを伝えている学校もあるようです。先生方の心の健康を守り、仕事の環境を整えるためにも、そろそろ、こうした慣習を見直すべき時期にさしかかっていると、私は思います。

難しい保護者には、ひとりで抱え込まず、複数の教師で対応すること。これも鉄則です。相手が1人だと「言った。言ってない」のやるとりがエスカレートしやすくなります。複数の教師で対応することで、これを防ぐことができます。

関連記事