【連載】教育現場の課題をひもとく 保護者にどう対応するか② 学校現場では混迷が引き続く

帝京大学教職大学院教授、元全連小会長 向山行雄

○悩んだ末に命を落とす教師も

「公園デビュー」世代が思春期のころ、テレビドラマ「金八先生」が放映されていた。テレビの金八先生は、いつも子どもの味方だった。その後「新人類世代」と呼ばれ、幼児期の「公園デビュー」の時代を経て、小学生の保護者になった。やがて、2000年代に入り、各地の学校現場で保護者対応の難しさが話題になるようになってきたのである。

東京都では、2000年代に、新卒教師の退職が相次いだ。いずれも小学校の学級担任だった。自ら命を落とす若手教師も複数いた。学級経営で悩む教師は、保護者対応が苦手だった。保護者の鋭い追及をうまくかわせず、独りで抱え込んでしまう。やがて、自分は教師に向いてないと思い込む。豊かな時代に育ち、他人とのコミュニケーションの苦手な若者世代にとって、現実の厳しさは到底耐え切れない。

○校長会はどう取り組んだか

東京都公立小学校長会では、こうした事態を重く見て、いくつかの対策を講じた。

一点目が、対策委員会の活動である。私が担当役員のときに設置した。一つは「初任者配置対策委員会」で、「初任者の大量配置の状況把握とそれに伴う諸問題の調査」と「初任者配置および初任者研修等に関する要望等についての意見集約」を実施している。もう一つは「学校要望等対策委員会」で「学校に対する多様な要望についての調査」と「教育管理職・教員のメンタルヘルスについての調査」を実施している。

二点目が研修会の実施である。弁護士を講師として招き、厳しい事案とその対応についての事例を協議し、管理職の危機管理能力を高めた。三点目が行政への要望の具現化としての東京都学校問題センターの開設である。学校や地教委だけでは解決できない事案について、各種専門家チームで対応する組織を発足させた。

四点目が全国レベルでの情報交換である。大都市と地方都市、農村部などでの実態の違いなどの学習である。五点目が理不尽な要求への各種会議やメディアなどを通じての反転攻勢である。

○ジジババの登場におののく

こうして2010年ごろまでには、給食費未払い保護者の減少などを含め、一定の落ち着きを見せはじめるようになった。東日本大震災後の「絆」を大切にする風潮も手伝って、このまま事態は改善されるかのようにも見えた。

だが、2015年の今、大都市圏を中心に、保護者対応は依然として大きな問題となっている。私は、年間50回程度、各地の講演会、研修会に出かける。出かけた学校で、保護者対応をしている場面をしばしば目撃する。

A小学校の事例。保護者が外国籍、子どもは特別な支援が必要。保護者が虐待を繰り返す。子どもは、時に学校からエスケープする。校長が保護者を呼んで改善を促しても、らちが明かない。民生・児童委員の助力を得るが、話が進まない。そのくせ、ことあるごとに学校へ苦情を申し立てる。校長も学級担任も疲れ果てている。しかし、人的スタッフの応援はどこからも来ない。せいぜい週に一度のスクールカウンセラーだけである。

このような保護者を筆頭に自己チューな保護者、超過保護ママや放任家庭、ジジババ任せのルンルンママなど多様な保護者が闊歩かっぽする。現在の小・中学校の保護者世代の多くは団塊ジュニア世代。そして、孫のバックには大量の団塊ジジババの存在がある。保護者の陰に祖父母の存在が見え隠れするようになった。この先、どうなるか気になるところである。