【連載】教師のための人間関係づくり 第6回 やる気を引き出す言葉、くじく言葉

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富 祥彦

 

○やる気を奪う教師になっていないか

相手が子どもであるか、保護者であるか、あるいは同僚の教師であるかにかかわりなく、その人と接しているとやる気が出てくる人と、やる気を奪われてしまう人とがいます。

人のやる気を奪ってしまう教師には、なりたくないものです。では、やる気を奪ってしまう教師に共通する特徴とは、何でしょうか。それは、「人のやる気を奪う言葉」を使っている、ということです。

アドラー心理学で「勇気くじき」といいますが、「人のやる気を奪う言葉」ばかり使っている「やる気を奪う名人」のような教師が残念ながら、います。

「それは、私のことでは?」とびくっとされた方もいるかもしれません。たしかに、耳の痛いお話です。しかし、何気なく使っているちょっとした言葉が、子どもや保護者や同僚の心を知らず知らずのうちに傷つけ、やる気を奪ってしまっています。

ある程度までは、仕方のないことかもしれません。人と人がふれあうとき、相手をまったく傷つけずにすませることなど、不可能なのですから。けれども、やはりできるだけ避けたほうがいいことは言うまでもありません。

○「何度言ったら…」「そんな子は嫌い」は禁句

やる気をくじく言葉の代表格は、「何度言ったら、わかるんだ!」あるいは「何度やってもできないのかぁ!」です。この「何度言ったら…」という言い回しが、人の心に「私は結局、できない人間なんだ」「どうせダメな人間なんだ」という否定的な自己イメージを蓄積し、投げやりな態度を育んでしまいます。

「やっぱり、できなかったか」などという無神経な言葉を使う人もいます。そのように言われると、深く傷つく人は少なくありません。

小学校低学年の先生がよく使う言葉が「そんなことをする子は、先生は嫌いです!」。低学年の子どもは教師から嫌われてはとてもやっていけません。それがわかっていて言うのですから、ほとんど脅しです。教師としては、発奮を促すつもりで使っていても、言われたほうは、ただ意欲を奪われるだけ。そんな言葉の代表格です。

「おまえには、ガッカリしたよ」「おまえは、もういい」。部活動などで生徒が教師の期待を裏切ったときに、つい言ってしまう言葉です。この言葉を言われると、これまで自分のやってきたことの全てが無駄であったと感じるようになることが少なくないものです。そして自分は何をやっても無駄だと、投げやりになるのです。

○言葉に傷つき、言葉に喜ぶ

カウンセラーとして、子どもたちの言葉を聴いていると、彼ら彼女らが担任や部活の顧問の先生のちょっとした言葉にどれほど傷つき、また、どれほど喜びを感じているか、ひしひしと伝わってきます。カウンセラーの言葉より、教師の言葉のほうがずっと重いのです。

教師は子どもを奮起させようと叱咤しったしているつもりかもしれません。けれども、多くの子どもはやる気をすっかりくじかれてしまいます。

保護者に「お母さん、お子さんのこと、もっとみてあげてくださいませんか」。教師がよく使う言葉ですが、このように言われると、「あ、先生は、私のこと、だめな親だと思っていたんだ」と感じます。そしてますます、親としての意欲を失ってしまいます。教師から非難されると「どうせ私は、だめな親だから」という否定的な気持ちが生まれてしまうからです。

管理職や同僚から「あなた、教師としてやっていけるんですか」などと言われたことをきっかけに、すっかり自信を失ってしまう人もいます。「私は、無能な人間に見えているんだ」「だとしたら、本当に無能なのかもしれない」などという思いを生じさせ、意欲を奪ってしまうのです。

○「あなたなら、できるはず」と励ます

自分が何気なく使った言葉が人のやる気を奪ってしまっていないか。この機会に少し振り返ってみましょう。  では、どんな言葉をかければいいのか。人の意欲を育てる言葉、アドラー心理学でいう「勇気づけの言葉」です。

「あなたなら、できるはず」と、相手への信頼と期待を込めた言葉をかけるのです。他者からかけられた信頼と期待に応えようとして、人の「やる気」は育まれていくのです。