【連載】教師のための人間関係づくり 第7回 若手教師にどう声かけするか

明治大学文学部教授、教師を支える会代表 諸富祥彦

 

○「今度の先生、だいじょうぶ?」

今、若手教師が急増しています。20代の教師が過半を占めている学校も、そんなに少なくはないのではないでしょうか。

そんな中、50代の教師は、若手教師を見ながら「自分はもう潮時かな」と感じることがある、ともらします。ある小学校の女性教師は言います。「最近、体が動かなくて、子どもたちの遊びについていけなくなりました。保護者の方の話をうかがっても、なんだか私の価値観とはずいぶん違っていて」と自信をなくしておっしゃいます。気力体力の減退に伴う悩みです。

もう一つ、私が主宰している「教師を支える会」で、50代の先生方から寄せられる場合が多い悩みの一つに、「若手教師にどう声をかけたらいいのかわからない」というものがあります。50代の先生方が、若手教師への接し方が難しい、と悩んでおられるのです。

若い先生は、まだ経験が少なく、あまり自信もありません。保護者の視線も厳しい。「子どもを育てたこともない、あなたに何がわかるというんですか」とストレートに迫ってくる親御さんもいます。「今度の先生、だいじょうぶ?まだ若い先生だからお母さん、心配なの」と家で子どもに言ってしまう保護者の方もいます。すると、これを聞いた子どもは「あの先生、あまりいい先生じゃないんだ」と感じるようになり、教師の指示が入りにくくなります。これがきっかけで学級崩壊になった事例もあります。

○20代と50代の教師しかいない

教員の年齢構成の偏りから、今、20代の教師か、50代の教師しかいない学校が増えています。中間層が薄いのです。このような実態の中で、50代の先生方に若手教師への声かけをためらう方が少なくありません。

「最近の若い教師は、傷つきやすく、プライドが高いので、相談してこない」と多くのベテランの先生はおっしゃいます。「待ちの姿勢」でいるのです。
けれど、20代の教師からしてみれば、50代の教師はあまりに年齢も経験も違うので、相談しづらい雰囲気を感じることがあるのも、たしかです。「私のためにベテランの先生の時間をとるのは申し訳ない」と感じている若手教師もいることでしょう。ここは、やはり50代のベテラン教師のほうから、どんどん話しかけていただきたいと思います。

○声かけしたら「私、ダメ教師ですか……」

どう声かけするのがいいのか。これが案外、難しいようです。

ある50代の教師は、20代の教師が困惑しているように見えたので「だいじょうぶ?」と声をかけました。すると、20代の教師は「私、だいじょうぶじゃないように見えるんですね。そんなに、ダメ教師ですかね、私……」と言って泣き崩れました。「だいじょうぶではない自分」を見透かされてしまった気持ちになり、恥ずかしい姿を見られたからか、それ以降、この2人はまったく口をきかなくなったといいます。

ただでさえ、学級経営がうまくいかず、保護者からもクレームをつけられて自信を失っているところに、それを見透かされ「自信のない弱い自分」を見られてしまったことで、これまで演じてきた「だいじょうぶな自分」を、その50代教師の前では演じられなくなった、というのです。50代教師は「ただ、心配だから声をかけてあげただけなのに、すっかり心を閉ざされてしまった。いったい、私は、どうすればよかったんでしょうか」と困惑していました。

○ゆるく「最近、どうですかぁ?」と

では、どんな声かけがいいのでしょうか。

お勧めなのは、「最近、どうですかぁ?」という「開かれた質問」による声かけです。「あなた、○○しましたか?」という「閉ざされた質問」は、情報収集のための質問です。これに対して「最近、どうですかぁ?」という「開かれた質問」は、質問という形をとってはいるものの、目指しているのはリレーションづくり。「こっちが聞きたいことを聞くんじゃなくて、相手が話したいことを話してもらうきっかけづくり」のための質問です。

「最近、どうですかぁ?」――。ちょっとゆるんだ、軽みのある雰囲気で、若手の先生に声かけしてみましょう!

関連記事