【連載】学校教育相談の歩みと展開 第3回 「傾聴」は依然基本

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

ロジャーズの「傾聴」は依然基本

■学校教育相談の捉え方

学校での教育相談は、全ての児童生徒を対象にしている。しかも、全ての教師によって、あらゆる領域、機会を通して実施されるのが望ましく、特定の教師だけが実施するのではない。全ての児童生徒に及ぶ教育機能である。このような観点から、全ての教師がカウンセリング・マインドを身に付け、共通理解を深めながら、学校全体として機能を高めていくのが極めて重要である。

学校での教育相談は、児童生徒の人格をより健全な方向に進める指導と、適応上の問題やいわゆる問題行動に対する指導との両面がある。教育相談はこれらに関連するが、基本的には個別指導の立場に立ち、教育相談と生徒指導の接点を明らかにして展開していく必要があろう。

また国分康孝氏が提唱する能動的な教育カウンセリングの積極的な導入・活用を図ることは、学校教育相談の発展に欠かせないと認識しておきたい。
したがって、これからの教育相談は――

(1)児童生徒の精神的健康を目指す。
(2)自己実現の指導・援助活動で、(ア)開発(イ)予防(ウ)治療――の3つの機能がある。このうち、学校現場では(ア)と(イ)が中心になる。
(3)学校教育相談は、(ア)全ての教師が行う教育相談(イ)教育相談の考え方を生かす教育活動(ウ)専門的な相談係教師が行う相談活動。

このうち、(ア)と(イ)には一般化と補充、専門化と統合、(ウ)では充実と発展を図る。将来的には、全校にスクールカウンセラー1人を配置予定。

■カウンセリングの進め方・心とスキル

学校教育相談の中心は、カウンセリングである。また学校でのカウンセリングでは、専門的な知識よりも、教師と生徒との人間関係が重要になる。しかし、カウンセリングを実施するときは、その本質の理解が必要である。とはいっても、カウンセリングの全てをというのではない。日常のカウンセリングで最小限の知識やスキルを身に付けておくのが望ましい。そのことに触れておきたい。

まず最初に、ロジャーズの来談者中心療法はマスターしておきたい。奥は深いが、個人面接をする際の基本中の基本ともいえる。私は治療者ではないので、ここでは、理論と呼ばせてもらう。

昭和30年代から50年代にかけて、ロジャーズ流カウンセリングは一世を風靡した。今日では、その割には根付かなかったと指摘されているが、カウンセリングの基本であるのは間違いない。それというのも、どんな流派、理論で面接しても、最初はラポールづくりが大切で、その手がかりを与えてくれるのはロジャーズ理論が最もふさわしいからだ。

■三大理論その1=ロジャーズ理論

カール・ロジャーズ(1902~87年)。来談者の苦悩や体験に忠実になり、「受容・共感・傾聴」で、無条件の肯定的配慮を行い、自己実現を促す。「来談者中心療法」の誕生は1940年。「非指示的カウンセリング」が当初の名称。後に改称。

同療法の発展史の初期、第1段階では、受容、繰り返し、明確化を重視した技法中心。第2段階は50年代で、技法よりも態度を重視。第3段階は60年以降。人間中心のアプローチに変化し、グループアプローチやエンカウンターの研究に生涯携わる。「第三の心理学」と称せられる。

それでは、カウンセラーは何をなすべきか。

まず、クライエントが自己探求ができるように安全な雰囲気を提供し、その話によく耳を傾ける(傾聴)。それによってクライエントは、自己探求を深め、自分の進む道に自ら気付くのである。これを「非指示的アプローチ」と名付けた。現在でも、この「指示せず、傾聴する」技法が「来談者中心療法」だと理解している人は多い。しかし、後にロジャーズは、大切なのは技法でなく、カウンセリングの態度であると述べている。

ロジャーズは、自己概念と経験という独自の概念から「健康なパーソナリティ」を説明しようとした。これが自己一致と不一致である。「人間には、よくなる力が内在している」との人間観から自己実現を考えた。このパーソナリティ理論で自己概念とは「私とは、このような人間である」との自分についてのイメージであり、思い込みである。自己一致、つまり事実に即した自己概念を持つことは、「あるがままの自分」と「思い込みの自分」とが一致すること。「感情と行動」が一致していることである。