【連載】教育現場の課題をひもとく 言語活動の成果と課題① 重視の意味は理解されたのか

埼玉学園大学人間学部子ども発達学科長 梅澤実

平成20年告示の現行学習指導要領で、各教科での言語活動の重視が打ち出された。それから7年、今年8月、その成果と課題が議論され、次期学習指導要領への改訂に向けた「論点整理」(以下「論点」)として示された。そこでの議論をもとに整理してみよう。

○言語活動の成果と課題

「論点」では、全国学力・学習状況調査の結果などから、「言語活動の充実が児童生徒の学力の定着に寄与していることが示唆されている」とした。同時に、課題として、「言語活動についての目的意識や、教科等の学習過程における位置づけが不明確であることや、指導計画等に効果的に位置付けられていないことにより生じている問題」があるとも指摘している。

これまで多くの授業を見てきた。そうした授業の中で、学習活動として言語活動が取り入れられているが、違和感をもつものがあった。言葉使用に能動的な姿が見られないのだ。自分の言葉を聞き手に届けようという姿と話し手の言葉を受けとめようとする聞き手の姿が見られないのである。

例えば、グループや学級全体に、発表者はノートにまとめた内容を見ながら淡々と読む、聞き手は静かに聞き、自分の番を待っている、といった授業である。質問もでないので、教師は数人の子どもを指名し、発表への感想を言わせ、それに補足するように、発表の仕方や内容について褒めて終わるというものである。

原因は、次のような点が考えられる。語り手の側に聞き手に伝える意識が薄い、また聞き手は話し手から何を学ぶかが見えていない。言い換えれば、学習活動の目的が共有化されていないために、言語活動をする意味が理解されていないともいえる。

○言語活動の道具―「基礎的・基本的な知識」

「活動」を特徴付けるもとして、エンゲストロームは、「協働性」「媒介性」「対象指向性」の3つを指摘した(エンゲストローム『拡張による学習』新曜社)。言語活動もまた、複数人で言語を道具として、目標達成に向け、話し、聞き、書く、読むという行動に取り組む活動である(算数科では、言葉に数や式も加わるだろう)。その道具は、各教科の「基礎的・基本的な知識」として学ばれる。

そこで、考えられねばならないのは、知識が道具となるためには、説明されただけでは使えないということである。道具には、その道具が使用される状況がある。その状況で使用されて、初めて道具となる。巻き尺が測定器具と説明され、目盛りの読み方を学んでも、それだけでは使える知識とはならない。巻き尺を使用する必要のある状況には巻き尺で測定しなくてはならない問題が埋め込まれている。それを学習者が見つけ出し、実際に使用してみて、それがもつ特性と機能が学ばれ、道具となる。

○アクティブ・ラーニングとは

学習指導要領改訂に向け、アクティブ・ラーニングという言葉が教育の場で盛んに語られだした。アクティブ・ラーニングとは、教師が一方的に語る講義形式ではなく、学習者が能動的に学習に参加するようにするための教授・学習法の総称であり、「外化」を伴うものである。

アクティブ・ラーニングは、当然、言語活動を伴う。高等教育の授業改善として提案されてきたが、「論点」では、小学校から必要であるとされた。小学校や中学校では、これまでも教師による一方的な講義形式の授業はなかった。新しい言葉の提起が、現在の課題を解決する万能薬かのように捉えてはならない。なぜ、こうした言葉が提起されたかという背景を考える必要がある。

そのことを踏まえ、次回は、言語活動について、「学力」「知識」「状況」をキーワードに考えてみたい。

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