【連載】校長のパフォーマンス 第57回 故三宅なほみ教授のこと

教育創造研究センター所長 髙階玲治

最近、ある図書を読んでいたら、「知識構成型のジグソー法」の説明の冒頭に「故三宅なほみ先生」とあってびっくりした。

三宅さんは、東大の大学総合教育研究センター特任教授で、大学発教育支援コンソーシアム推進機構の副機構長でもあった。5年ほど前、N市の学力向上のための外部の提言者として出会ったのが最初である。

当時、私はジグソー法について全く知らなかった。説明によれば、ある課題について違った資料で学ぶグループをつくる。そのグループが資料を徹底的に検討・理解することでエキスパートになる。他のグループも別な資料を検討・理解してエキスパートになっている。そこで次に、グループから一人ずつ集まって新たなグループを作り、互いに自分たちの検討・理解したことを説明しあい、シェアする。ジグソー活動である。

課題が与えられ、全ての資料を検討しなくとも、他のグループが深く検討してくれている。結果として相互理解が進むという。

協調学習のひとつの在り方である。

学習の目的は、例えば(1)課題の内容を説明できる(2)他のメンバーの説明がわからない場合質問できる(3)メンバーと協力して課題解決ができる(4)話し合いの時間管理ができ効率的に行える――などであるという。

この「知識構成法のジグソー法」は、私はまだ十分理解できたとは言えないが、小・中・高校など全国に広まっている。新しい学習方法としてアクティブ・ラーニングに認定されたと言われていた。三宅さんは、中教審の教育課程企画特別部会の委員でもあった。協調学習がアクティブ・ラーニングの中心課題の1つになりうることは確かで、これからの論議が重要になる矢先である。65歳という。

N市でご一緒したのは、年3回程度でほぼ3年であった。専らジグソー法を中心に話されていた。先進的な話題提供で楽しい思い出である。その後、東大で行ったコンソーシアム推進機構の大会では、企業との連携による学校の教育活動がテーマで興味深かった。

今年3月28日には「実践者が語るアクティブ・ラーニングの可能性」のテーマで、ジグソー法に基づく小・中・高校それぞれの実践報告が東大で行われた。そのとき三宅さんは「ガンに犯されていて、薬を飲んでいるため声が枯れてゴメンナサイ」とあいさつされた。

そのわりには元気そうであった。休憩のとき2人で雑談し、最後に「健康第一ですよ、十分気をつけて」と話したのだが、亡くなったのは5月という。死期がそれほど迫っていたとは信じられない思いである。

中教審は次期学習指導要領改訂に向けて『論点整理』を公表したが、具体的な論議はこれからである。ジグソー法や協調学習の新しい展開について、もっと深い話を聞きたかったという思いが強く残っている。

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