(生き生きした教師生活 メンタルヘルス気を付ける視点)ストレスの早期発見と調整力磨こう

山積する新たな教育課題の対応や慢性化した多忙の中で、教師の疲弊や精神疾患などが増えている。未来を創る子どもたちにより良い実践を行うためにも、教師が生き生きと日々の教職に向かっていけるような「メンタルヘルス」上の意識や行動に理解を深めるのは一層、重要度を増している。3人の専門家に気を付けるべき視点や意見を聞いた。


ストレスの早期発見と調整力磨こう
創価大学大学院教職研究科教授 田村修一

近年、教師の精神疾患による休職者の増加やメンタルヘルスの悪化が問題になっている。現在、教育現場は、さまざまな課題が山積し、解決を期待されている教師も対応に苦慮している。加えて教師は、児童生徒、保護者、管理職、同僚教師など重層的な人間関係の中で日々仕事をしている。このような状況の中で、教師の役割をうまく遂行できずにメンタルヘルスを悪化させ、「自分はダメ」と自分を責める教師がいる。このような状態の教師が放置され、それが長期化すれば「うつ病」になっていく。

病気休職者の教師に最も多い精神疾患「うつ病」とは、一言で言えば「気持ちがふさぎ込み、何をするにもおっくうになる」症状である。抑うつ、不眠、食欲不振、体重減少、気分の日内変動、絶望、自殺願望、自殺企図などが生じる。今まで簡単にできていた仕事も手につかなくなり、自信を失い、不安が増し、今後に対して悲観的になる。教師としての適性とも言える「真面目さ」や「責任感の強さ」が、皮肉にもうつ病の原因になる。つまり、何事にも熱心に取り組む教師ならば、誰でも「うつ病」になる可能性がある。

教師がメンタルヘルスを良好に保ちながら、充実した仕事を長期間続けるためには、日常的にストレスとうまくつき合う必要がある。つまり、自分自身でストレスを早期に発見し、ストレスを上手にコントロールする能力が教師には必要なのである。

下記は、マスラックの「バーンアウト(燃えつき症候群)尺度」の質問項目である。バーンアウトとは、医師、看護師、教師など対人援助職に多く見られる症状で、「自ら理想を求めて悩み、努力してきたが、その結果、不満足、疲労感、失敗感だけを持つ状態」と定義されている。主な3つの症状として「脱人格化(非人間的な言動や振る舞いの増加)」「個人的達成感の低下」「精神的消耗感」の増大がある。

■最近、次のようなことを経験しましたか。

【A】▽「こんな仕事、もうやめたい」と思うことがある▽こまごまと気配りすることが、面倒に感じることがある▽同僚や児童生徒の顔を見るのも、嫌になることがある▽自分の仕事が、つまらなく思えて仕方のないことがある▽1日の仕事が終わると、「やっと終わった」と感じることがある▽出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある▽同僚や児童生徒と、何も話したくなくなることがある▽仕事の結果は、どうでもよいと思うことがある▽仕事のために、心のゆとりがなくなったと感じることがある▽今の仕事は、私にとって余り意味がないと思うことがある▽体も気持ちも、疲れ果てたと思うことがある

【B】▽我を忘れるほど、仕事に熱中することがある▽この仕事は、私の性分に合っていると思うことがある▽仕事を終えて、今日は気持ちの良い日だったと思うことがある▽今の仕事に、心から喜びを感じることがある▽仕事が楽しくて、知らないうちに時間が過ぎることがある▽我ながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある

※マスラックの「バーンアウト尺度」を一部改変して作成

チェックリストの、Aはメンタルヘルスの悪さを示し、Bはメンタルヘルスの良さを示している。自己チェックの結果、Aにたくさんの印がつき、Bにあまりつかなかった場合は、次の点に注意する必要がある。

(1)精神的な疲労がたまり、抑うつ状態が高まっている可能性があるため、十分な睡眠と栄養をとる(2)重要な判断や決断を1人でせず、信頼できる人に相談し、その意見を参考にする(3)脳が疲れているため、仕事量を減らし、自分だけで抱え込まない(4)自分を責めすぎず、頑張りすぎない(5)程度が重いと判断される場合は、適切な医療機関で受診する必要がある――。

「うつ状態」が重い教師は、苦しんでいても他者に隠す傾向があるため、周りの人が気付いてあげるのが重要になる。管理職や学年主任などの職場の中堅リーダーは、日常的にバーンアウト尺度のチェック項目に、自校の教職員が当てはまっていないかを丁寧に観察する必要がある。異変に気付いたときには、早急に援助の手を差し伸べる必要がある。

複雑な教育現場の課題解決や教師のメンタルヘルスの予防・改善には、教師が自ら積極的にスクールカウンセラーと連携したり、同僚教師とチームで児童生徒を指導・援助したりするのが重要である。職場の人間関係は、互いに助けたり、助けられたりして良くなる。それが、教師のメンタルヘルスの予防、改善やストレスの軽減にもつながっていく。これからの教師は「助けられ上手」な教師であるのが望ましいと考える。

田村修一(たむら・しゅういち)教授 専門分野は、学校心理学、カウンセリング心理学、教育心理学。現在の研究テーマは、チーム援助を促進できるリーダー教員育成プログラムの開発。主な著書に『教師の被援助志向性に関する心理学的研究』(風間書房)、『よくわかる学校心理学』(ミネルヴァ書房)などがある。

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