提言 外国につながる友達 グローバル人材はそこから育つ

NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ事務局長 高橋清樹

 
□―世界に向かって育つタネ―■

「私たちは、小学生のころから、クラスに外国につながる友達がいるのが当たり前でした。今も、フィリピンや中国やボリビアから来た生徒と一緒に勉強するのは、自然なことです」。

これは、神奈川県で行われた国際理解教育発表大会で行われた、高校生のプレゼンテーションでの言葉である。平成26年度の文科省の学校基本調査によれば、小・中学校に在籍している外国人児童生徒数は6万3800人あまりで、前年度より1800人ほど増加している。高校生の発表のように、学校の中に外国につながりを持つ児童生徒が当たり前に在籍する状況が、確実にやってきている。

外国につながりを持つ児童生徒とは、海外経験があったり、一方の親が外国にルーツを持っていたりと、国籍にかかわらず、広く「外国につながる」という言い方で総称している。数としては、前述の外国人児童生徒数の倍以上と考えられている。いわば、外国の言語や文化のタネを持ったグローバル人材である。そうしたグローバル人材を育てるという視点での教育が求められているのではないだろうか。

■―高校進学に大きなカベ―□

昨年11月、文科省内に「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」なるものが設置された。私も委員の1人として翌12月に行われた第1回目の会議に参加した。

初回は、今後検討するべき課題について文科省の提案を受け、各委員が意見表明をした。その中で、期せずして何人かの委員から出されたのが、「外国につながる子どもや若者が日本社会で自分の将来を夢見たり、実現したりするのが難しい状況だ」という指摘である。私自身も同意見で、特に高校進学への大きなカベについて指摘した。

障害物競走に例えてみよう。小・中学校の義務教育が終わった時点がスタートで、就労などの社会参加・自己実現をゴールとする障害物競走である。現代社会は日本の子どもたちにとっても、ゴールまでに多くのカベがある。乗り越えるのが困難な状況にあるといえる。

ところが、日本社会では高校進学が97%にも達している中で、外国につながる子どもたちの半数近くは「さあ高校へ」というスタートラインにすら立てないのである。

文科省の平成26年度の学校基本調査によれば、外国人児童生徒の在籍数は中学校で約2万2千人に対し、高校は約1万2千人である。なぜ高校進学がカベになっているのであろうか。「日本語ができなければ、高校に入ってもついていけないでしょう」というのが、多くの高校の先生方の感覚ではないだろうか。その結果、高校入試のカベは日本語のカベになっていて、高校進学を果たしても、多くは定時制で学ぶ状況がある。果たしてそれでいいのだろうか。

大学では留学生を多数受け入れ、奨学金を出し、日本語教育を進めている。しかし、留学生以上に光を当てなければならないのは、将来、日本での社会参加を夢見る外国につながる子どもや若者ではないだろうか。その夢を実現させるためには、高校でのグローバル人材として育成は欠かせないと思う。今後、文科省の会議で検討課題に挙がってくるのは、高校進学の推進と高校での日本語教育などの支援だと思っている。

神奈川県もそうだが、全国的にはいくつかの地域で高校進学のための特別枠を設置するとともに高校進学後の日本語や教科学習の支援が進んできている。その結果、大学に進学し、就職する若者が少しずつだが増えてきて、ロールモデルとなっている。

□―相手の立場で考える一歩に―■

もう一つ進めなければならないのは、学校での多文化共生の教育だろう。冒頭の高校生は、自分たちで外国につながる生徒に、文化の違いを感じた面や日本で困ったことなどをインタビューし、発表している。

例えば街で見かける「KOBAN」という表記について、日本で生活する外国人にとって分かりやすいものになっているのか、と疑問を呈する。「相手の立場になって考えること」が「私たち高校生にできることであり、多文化共生社会を創るための小さな一歩になる」と結んでいる。

多文化共生を考える教育は、高校生の市民権意識を高める教育でもあり、あらゆる可能性を秘めている。

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