【連載】探偵がみた学校といじめ 第9回 知識不足が重大ないじめを誘発

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 
 子どものいじめは各所で重大な問題となっており、さまざまな機関でいじめに関するアンケートなどが行われている。しかし、その結果は本当に正しいのだろうか。現場で子どもたちと直接接し、最も近い場所から様子を見てきた私には、もっと突っ込んで調べてみる必要があるのではないか、という思いが常にあった。

そこでいま、私は「1000人インタビュー」と称して、主にいじめの被害者やその保護者、関係者にインタビューをして回っている。まだ始めたばかりなので、実施数は50にも届かないが、「インタビュー」という、「アンケート」よりも詳しい情報の収集は、必ず今後のいじめ予防や対策に役立つものだと信じている。

いじめの現場に立ち会っていて、最近、特に感じるのは、いじめの初期消火が早い学校では子どもと教員の間にいじめに関する知識が浸透しているが、逆に回復が難しいような重大ないじめが発生している学校では、いじめについての知識が浸透していない、という実態だ。

ある学校で、私がいじめの事実をつかみ、学校で証拠説明をした際に、その部活顧問は、「いじめは通過儀礼のようなものであり、それは成長のタネになるはずだ」と言い放った。このケースでは、上級生が部活の後輩である被害生徒に、虫を食べることを強要しつづけたというもので、その他にも、複数のあざが残る暴力を繰り返していた。被害生徒は、何度も嫌だと話して、部活顧問にも相談していたが、そのたびに、仕返しとしてよりひどい暴力行為が行われていた。

また、ある私立学校では、下校時にカバンの中身を降車駅近くでばらまいたり、仲間外れにして路上に置き去りにしたりするいじめが頻発していたが、学校側は「校外で起きることは関知できないから、いじめ防止のための指導や解決については、学校は対策の責任を負わない」と言ってはばからなかった。下校時の班分けを学校側の指導でしているにもかかわらずである。

このような学校では、いじめの定義について、何がいじめに当たるのか聞いても、明確な回答は戻ってこない。その一方で、「いじめられる者にも原因がある」「嫌だと言わない方が悪い」など加害者擁護が際立っている。

いじめの初期消火が早いある学校では、学校外の関係者を含めて児童のいじめに関する知識が浸透していた。この学校では学習意欲が高く、保護者に対しても講座を開催していると聞いた。

いじめに関する知識の中で、最も分かりやすいのは、その定義や法律であろう。電話で相談を受けたとき、相談者によく話すのは、いじめについての知識である。その際、多くの相談者は、定義や法が初耳のような反応をする。

だから、私は「1000人インタビュー」の問いに、いじめの知識について尋ねる部分を設けた。私の視点や仮説が正しいかどうかは、いまの段階では不明である。だが、このインタビューを終えたとき、他にもあるさまざまな仮説や視点から得た結果が、いじめ撲滅に向けた対策に役立てばと、切に願う。この文章を読んだ皆さんの中に、「1000人インタビュー」に協力したいという方は、ぜひ連絡をいただきたいと思う。

▽NPO法人ユース・ガーディアン=探偵業のノウハウを生かし、客観的ないじめの実態を調査、レポートを作成するなどして数多くのいじめ問題の解決に寄与している。URL=http://ijime-sos.com/