【連載】学校教育相談の歩みと展開 第5回 心理療法理論を知っておこう

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

■精神分析理論

精神分析は、周知の通り、ジークムント・フロイトによって創始され、体系化された心理療法・理論の一つである。精神分析の最も中心的な考え方は、幼少期の体験が性格を形成すること。無意識の意識化があらゆる行動の原動力になることが主とした考えである。フロイトによる精神分析は、睡眠から夢、そして、自由連想法へと発展していく。

精神分析理論の「無意識」をはじめ多くの精神分析が、他のさまざまな心理療法に入り、多くのカウンセリング理論の基、あるいはジャンピングボードになっている。

子どもの心理療法として遊戯療法が用いられるが、そもそもその基になったのも精神分析理論であった。▽心の動き=意識・前意識・無意識▽心の構造=エス・自我・超自我▽防衛機制=抑圧・合理化▽コンプレックス=苦痛・恐怖感・羞恥心――が、精神分析の主な知見であった。

これらは、子ども理解を深める手だてとして役立つので、概略だけでも理解しておくと、カウンセリングを深めるのに役立つ。第1のカウンセリングと位置付けておく。

■行動理論

心理学を客観的・実験的な自然科学と考え、誰もが観察可能な「行動」を対象とし、観察測定を行うことを主張したのが行動理論である。「学習理論」がベースにある。有名なパブロフの実験のように、条件反射や条件づけによって、通常は現実に適応した反応を学習する。その学習を間違えたり、初めての体験の場合には不適応症状となる場合もある。行動理論では、人間は生まれた時は白紙。全ては後天的な条件によるものだと考える。

行動療法は、実験研究によって得られた「行動理論」を基礎にしたカウンセリング理論の一つで、今、最も人気のあるカウンセリングかもしれない。▽パブロフの実験▽オペラント条件付け▽主張訓練法(アサーティブな)▽シェーピング(段階的に近づく)▽系統的脱感作療法(負の感情を段階的になくさせていく)▽人間関係の問題で社会的スキル訓練▽論理的な情動行動療法など――を一通り学んでおくだけで、自己の豊かなカウンセリング手法に役立つ。第2のカウンセリングと位置付けておく。

■「三大理論」のまとめ

(1)精神分析理論とは、症状そのものよりも、誘因となる心理的背景、特に過去の経験によって心の中に刻み付けられた傷(心理的外傷)やストレスと向き合う精神的心理的なメカニズムなどに焦点を当て、治療へとアプローチする方法である。

(2)精神分析理論が過去の心理的外傷などを探るのに対して、症状そのものの軽減・消失を直接の目標とするのが、行動理論に基づく行動療法である。人の症状は、間違った学習によって形成された不適切な条件反射であるとして、その反応を除去し、適応行動(反応)を再学習することで問題解決を図ろうとする。

(3)人間学的な心理療法は、症状を「排除すべき問題」とするのではなく、クライエントを「症状を含めた一個の有機体」として理解する。人を、自分の意思決定によって成長と幸福に向かう、自己実現ができる存在とする。

実際のカウンセリング場面では、問題に応じてさまざまな技法が使い分けられる。どれも、クライエントとカウンセラー自身のパーソナリティーに合った傾向のものが用いられる。

カウンセリング・スキルの学習は、意識して練習していかないと身に付かない。そのことを伝えておきたい。カウンセリング・マインドの学習は、態度の学習であるが、スキルの学習と同じように、意識して自己研鑽に努めないと、なかなか身に付かないものでもある。

多様な技法の学習を通して、その技法を超えるもの(心意気・心構え・マインド)を感じ取るのが、極めて重要である。