【連載】教育現場の課題をひもとく 「特別の教科 道徳」への準備① 「特別の枠組みによる教科」について

元全国小学校道徳教育研究会会長 馬場喜久雄

1.なぜ道徳が「特別の教科」になるのか

昭和33年9月1日に、道徳の時間が特設されてから、さまざまな機会で道徳教育の充実と定着がいわれてきた。平成19年に教科化が強くいわれたことがあったが、結局はしっかりと充実されればいいと、教科化は見送られた。

だが、全国的に見て、道徳教育の機会均等とはいえない現状は続いた。そして、さまざまな課題が指摘されてきた。

またいじめの問題等に起因して、子どもの心身の発達に重大な支障が生じる事案や尊い命が絶たれるといった痛ましい事案まで生じており、いじめを早い段階で発見し、その芽を摘み取り、全ての子どもを救うことが喫緊の課題となっている。

こうした状況の下、内閣に設置された教育再生実行会議は、平成25年2月に第一次提言をとりまとめた。そこでは、いじめの問題が深刻な状況にある今こそ、制度の改革だけでなく、本質的な問題解決に向かって歩み出すことが必要であり、心と体の調和のとれた人間の育成の観点から、道徳教育の重要性を改めて認識し、その抜本的な充実を図ること、そして、「道徳の特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化し、指導内容を充実し、効果的な指導方法を明確化する」ことが提言された。

一方、文科省では「道徳教育の充実に関する懇談会」(座長・鳥居泰彦慶應義塾学事顧問)を設置し、▽道徳の意義、理念、目標▽道徳の内容・指導方法等▽市民科▽評価▽教科書・教材▽教員の資質向上▽家庭や地域との連携▽新たな枠組みによる教科化などが話し合われた。

2.法改正の実行

平成27年3月には、平成30年度から小学校、31年度から中学校において、道徳を「特別の教科」に位置付け、その充実・強化を図るための学校教育法施行規則や学習指導要領の一部改正が行われた。

学校教育法施行規則については、「第五十条、第五十一条、第七十二条、第七十三条、第七十六条、第百七条、第百二十六条及び第百二十七条中『道徳』を『特別の教科である道徳』に改める」などとされた。

小・中学校の学習指導要領の一部改正については、「『第3章 道徳』を『第3章 特別の教科 道徳』に改める」とし、「学校における道徳教育は、特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり、道徳科はもとより、各教科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて、児童の発達の段階を考慮して、適切な指導を行わなければならない」などと示した。

このほか、一部改正の概要は次の通り。

(1)学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の目標は、子どもの道徳性を養うという趣旨を明確にするとともに、道徳科の目標は、育成すべき資質・能力を明確にした。

(2)内容は、いじめ問題への対応の充実や、子どもの発達段階を基に、体系的に改善を図った。

(3)道徳科における指導上の配慮事項については、道徳科の特質を生かした問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習等を適切に取り入れるなど指導方法を工夫するなどを例示した。

(4)道徳科の教材については、子どもの発達の段階に即し、ねらいを達成するのにふさわしいものであることや、多様的な見方や考え方のできる事柄を取り扱う場合には、特定の見方に偏った取り扱いがなされていないものであることなどの観点に照らし適切と判断されるものであることと留意事項を示した。

(5)道徳科では、子どもの学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要があることとし、数値などによる評価を行わないことは、従前通りとした。

次回は、これからの道徳授業の在り方について述べる。