【連載】教師のための人間関係づくり 第10回 短く話すスピーチトレーニング

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富祥彦

○「話が長い」は教師の〝職業病〟

教師には、「話が長い人」が多い――。これは、小学校、中学校、高校、大学といった学校種に関係なく、教師にとって全般的な傾向であるように思われる。

いったん話を始めると、止まらない。いつまでも、ぐだぐだと話をしつづける。もう終わるかなと思っても、終わらない。話は、まだまだ続いていく。そんな人が、残念ながら教師には少なくない。教師として互いに、耳に痛い話だが、気をつけたいものである。

これは、1つの「職業病」であると私には思える。教師であるから当然ながら、授業の持ち時間いっぱいは話さなくてはならない。そのため、自分の話の内容に自信がない教師は、いつの間にか冗長に話をしつづける「悪癖」が身についてしまっているのかもしれない。しかし、それでは周囲がたまらない。仕事で関わる子ども、保護者、同僚はもちろんのこと、私生活で関わる全ての人にとって、はた迷惑なことである。

特にひどいのは、大学教員である。1講義90分間も話をしつづけなくてはならないからだ。熱心に話を聞く学生ばかりではないので、相手の反応にはおかまいなしに話を続ける習慣が身につきやすい。私の勤務する大学では、近々、100分授業になる。かの病はきっと、重症化するにちがいない。

私は学生の頃から、一方的な講義を聞かされるのが大変苦痛であった。自分が人にされて嫌なことは相手にしてはならない。このシンプルな原則を守るために、私は大学教員になってから、一方的な講義は可能な限り避けてきた。対話形式の授業、ディスカッションのある授業をずっと行ってきた。以前は少数派であったが、最近、ようやくアクティブ・ラーニングの普及などで仲間が増えてきた。心強い限りである。そのおかげで、私の「職業病」は、どうやら「軽度」ですんでいるようである。

○教師の非認知的能力を高めるために

全ての教師に「スピーチトレーニング」を勧めたい。最近はやりの言葉でいえば、教師の「非認知的能力」を高めるための最良の方法の1つが、スピーチトレーニングなのである。
スピーチトレーニングの最良の方法の1つが、「結婚式のスピーチ」を積極的に引き受けることである。結婚式では、短時間のうちに、面白く、ためになる話を分かりやすくしなくてはならない。しかも、新郎新婦にとって人生最高の晴れ舞台の会場である。最良のスピーチトレーニングの場である。

○5つのポイントで〝スピーチ上手〟に

それでは、「短く、分かりやすく、ためになる話」ができるようになるためのポイントはなんだろうか。次に5つのポイントを挙げるので、これらに留意してほしい。

(1)まず「結論」から言う=何を言いたいのかわからない話を聞かされるのは、苦痛である。
(2)「私が言いたいのは」と最初に伝える=「私は」と主語を明確にすると伝わりやすい。
(3)「たとえば」と具体例を入れる=抽象的な話ばかりではつまらない。
(4)1回の話のまとまりは「3分以内」とする=話を聞く集中力が持続するのは「3分」が限界である。
(5)その後は、話を聞いている側の「反応」にレスポンスする=よい話し手の中、相手のフィードバックに目を向けない者は存在しない。

自戒を込めて厳しいことを申し上げた。互いに、ぜひとも気をつけたいものである。