ニーズに応える調査研究行う 幼児教育でエビデンスを示す

河村潤子新国研所長に聞く

学力や児童生徒の問題行動など、日本の教育を取り巻く問題について研究・調査をしている国研。その所長に、文科省の前生涯学習政策局長の河村潤子氏が就任した。国研の研究・調査を、今後どのように教育現場につなげていくのか、聞いた。

――70年近い国研の歴史の中で、初の女性所長となる。抱負を。

就任した直後に、米国ペンシルベニア大学の研究グループが、シンクタンクの世界ランキングを公表した。2012年から教育政策分野のシンクタンクのリスト化も始めている。15年版では、教育政策分野65機関中で、国研が4番目の評価であった。有識者やジャーナリストなどからの票で評定しているようだ。世界でも一定の存在感を示しつつある国研の所長として仕事ができ、大変やりがいを感じている。

国研は、政策に先行して基礎研究を行っている。平成13年からは、名称が教育政策研究所になり、社会のニーズにタイムリーに応えるような調査・分析をしている。学校教育、社会教育の現場に資するようなミッションを成し遂げていきたい。

――全国学力・学習状況調査については。

次期学習指導要領に向けて現在、文科省が各教科のワーキングチームを設置し、議論を重ねている。この改訂に向けて、義務教育の機会均等と水準の維持が、全国学力調査の目的だと思っている。よい問題、意味のある問題を出題することが重要。今後も、全国学力調査の分析と授業改善のための提示を、引き続き実施していく。教育現場にとって意味のある調査でありたい。

――児童生徒の問題行動については。

近年、不登校が増加傾向にあり、中学校では36人に1人が不登校となっている。未然に防ぐにはどうしたらいいのか、国研の生徒指導・進路指導研究センターで研究している。防止するにはまず、子どもたちが学校を楽しいと感じるようにしなければならない。

不登校の原因として、学業不振も挙げられている。学校での学習が分からないということであれば、新たな学習方法を提示していく必要があるだろう。

――具体的な取り組みは。

日本の子どもたちは学力調査などの点数は高いが、学ぶ意欲が低いという問題を抱えている。学ぶ意欲を高めるには、学校教育の条件整備を進めなくてはならない。教員が子どもたちと向き合う時間をつくらなければいけないということだ。世界一多忙といわれている日本の教員の環境を整える必要がある。

1月に公表された馳プランでは、地方創生と学校創生を一体的に進めると打ち出されている。そのためには、学校の組織的な運営を行い、チーム学校を実現しなければならない。

教員には、組織でさまざまな課題に取り組んでいくマインドが大切だ。地域をパートナーとして、一緒に子どもを育てていく。これが求められる。これらが実現されれば、教員の負担感が軽減されるだろう。子どもたちと向き合う時間も増え、不登校などの問題にも、これまで以上に対応していけるのではないか。

――来年度からは、幼児教育センターが国研に設けられる。

幼児教育についてはOECDや米国などの国々でも着目している。早期教育が、その後の子どもたちの人生に大きな影響を与えるといわれており、米国の研究でこれが証明されている。

一方、これは特殊な米国コミュニティの例だという指摘もある。

したがって、日本における調査はどうあるべきか、手法を模索している最中だ。幼児期に育成できる能力にはどういうものがあるか、学問的に解明していく。時間はかかるが、エビデンスを示していきたい。

――全国都道府県・市町村の教育研究所・センターで構成されている全国教育研究所連盟(全教連)の委員長にも就任した。

これから教育政策を実施してくためには、国だけでなく、都道府県、市町村の協力が必要。さまざまな教育資源を寄せ合うのは必然だ。情報交流をするほか、役割分担をして多様な知恵を寄せ合うことができればと期待している。全教連が有効に機能できるよう、加盟機関などの意見を聞きながら取り組んでいきたい。