【連載】国際バカロレアを知るために 第24回 IB美術で変わる日本の教育

都留文科大学特任教授
広島女学院大学客員教授(IB調査研究室長)
大迫弘和

 

英語(もしくはフランス語・スペイン語)で出されていた国際バカロレア(IB)に関する情報を、日本語で読めるようにする作業が進められています。
IBの情報は「IBの理念や規則」「認定に関すること」「実践される各内容」の3つに大別されます。現段階で「IBの理念や規則」「認定に関すること」の2つについては、ほぼ日本語翻訳が終わりました。私も監修に携わりました。

現在は、「実践される各教科内容」についての翻訳作業が着々と進んでいます。「実践される各教科内容」については、「指導の手引き(Guide)」「教師用参考資料(Teacher Support Material=TSM)」に加え、科目により「資料集」や「公式集」といった補足的なものがあります。

これらについては、翻訳チームの下訳を、数学なら関西学院千里国際中等部高等部の平尾公美洋教諭、化学なら茗渓学園の田代淳一校長といった具合に、各科目の専門の先生たちが監修をしています。

2月18日に「美術」「音楽」の「指導の手引き」の日本語訳が公開されました。公式サイト(http://www.ibo.org/en/about-the-ib/the-ib-by-region/ib-asia-pacific/information-for-schools-in-japan/)にアクセスすれば、誰でも見ることができます。

IBのディプロマ・プログラム(高校2、3年生の2年間プログラム)は、6科目の教科学習と3つの「コア」と呼ばれる必修要件の合わせて9つの学習から成り立っています。

6科目とは言語学習が2科目、数学・理科・社会、さらに「芸術」の計6科目です。IBのディプロマ・プログラムを学ぶ高校生たちの多くが、世界中の名門大学に進学していきます。

IBの目標は「進学実績を上げる」ことではなく、あくまで全人的な成長にあるのですが、それでもIB生徒は世界中の大学から歓迎されており、そのような進路になる場合が多いのです。

彼らは高校卒業まで「芸術」を学び続けます。私が、IBが日本の教育改革のトリガー(引き金)になり得ると考えるのは、IBのこのような点にもあります。

東大には毎年約3千人の学生が入学します。その中の一体何人が高校3年生で「芸術」を学んでいたでしょうか。

「IB美術」の「指導の手引き」の一部を見てみましょう。

「たとえば美術ジャーナルは美術コースの中心的要素と考えられています。美術ジャーナルでは振り返りのプロセスを通して多数のALTスキル(筆者注:ALTスキル=学び方のスキル。社会、研究、思考、コミュニケーションおよび自己管理の5つ)を結合させます」とあります。

ここにある「美術ジャーナル」をぜひ、日本の教育関係者には見てもらいたいと思います。

よく「コア」のひとつであるTOK(Theory of Knowledge=知の理論)がとてもIB的といわれます。TOKを通してIB教育の本質を知る人がいます。私は「美術ジャーナル」も極めてIB的であり、そこからIB教育とはどういったものかを知りうると考えています。

例えば東大に進むような学生が、高校時代に「美術ジャーナル」のような芸術教育に取り組んでいたら、この国はずいぶん変わっていくのではないかと思うのです。

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