【連載】教育現場の課題をひもとく 「特別の教科 道徳」への準備② これからの道徳授業のあり方

元全国小学校道徳教育研究会会長 馬場喜久雄

1.読む道徳から、考える道徳、議論する道徳へ

これからの道徳の授業のあり方について述べる。

まず、強く言われているのが、「読む道徳から、考える、議論する道徳へ」ということである。これは、教材として、読み物を使わないということであろうか。いや、そうではない。主人公や登場人物の心情理解に終わっていた授業があったのではないだろうか。心情や考えを追うだけではなく、自分事として、考えたり、話し合ったりすることが大切なのである。いままでもそのような授業をしていた教師は、さらなる改善を進めればよいのである。

どのようにしたら、道徳科の本質を捉えて、考える道徳、議論する道徳を実践できるのか、以下に具体的に述べる。

(1)明確な指導観に基づく道徳の授業

指導観は、価値観・児童観・教材観をまとめていう。学習指導案を書くときに、「主題設定の理由」に書かれる「ねらいとする価値について(価値観)」「児童の実態について(児童観)」「教材について(教材観)」である。

(1)ねらいとする価値について

「特別の教科 道徳」の解説書を基にして、ねらいとする価値とはどういうものかを明確にする。そして、その価値について、自分はどう考えるかを書く。

(2)児童の実態

課題となるところだけではなく、児童のよさを書くことも忘れないようにしたい。児童の実態は、教師の指導の実態でもある。今まで、各教科領域等で、ねらいとする価値についてどのように意図的に指導してきたかを書く。その結果、今の児童の実態はどうであるかを書く。指導の実態が明確になると、本時は、補充・深化・統合のどれを意図するのかが見えてくる。

(3)教材について

(1)と(2)から教材を選択する視点を明確にし、選択した教材をどのように活用するかを書く。
(2)教材をどのように活用するか(中心発問をどこにおくか)
(1)資料の活用類型(青木孝頼氏(元文部省主任視学官、元筑波大学教授)による)

教材の活用について、「資料の活用類型」をもとに考えていくと、授業の充実が見えてくる。これは、新しいものではないが、中心発問をどこにするかがはっきりし、どのような話し合いができるかが明らかになる。

▽範例的活用=登場人物をお手本にして、「主人公から見習いたいところはどこか」「主人公の決心は、どんな考えからきたのか」を問う。
▽批判的活用=登場人物の行為や考えについて、賛成反対などの議論をする。「この人のしたことをどう思うか」を問う。
▽共感的活用=登場人物に自我関与させ、本音を語らせる。「○○さんは、このときどんな気持ちだったろうか」「悩んでいる主人公は、どんなことを考えているだろうか」を問う。
▽感動的活用=感動を大事にして「この話の中で、感動したところはどこか」「感動したのはなぜだろうか」を問う。

(2)基本発問

中心発問が決まったら、そこへ行くための基本発問や、中心発問の後の基本発問を考える。基本発問とは、「ある資料を中心として用いる以上はこの発問だけはどうしても欠かせない、また他の発問をもってしては代えることができないという重要な発問がいくつかあるはずである。これを中心資料における基本発問と呼ぶことができよう」(『道徳資料の基本発問』青木孝頼編・明治図書)ということである。

(3)展開後段

展開前段で、中心資料を用いて価値を追及し、把握した後に、自分のことを振り返る展開後段がある。ここでも、振り返って、自己を見つめるのと同時に、価値について考え、議論することもできよう。

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