【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南①

教育新聞論説委員 寺崎千秋

伝統と子どもを大事にして
4月 発信と出会いを大切にする学校経営

「教育新聞」論説委員・寺崎千秋氏(元全連小会長)編著による「新任校長のチャレンジ―月別の校長術最強指南」が今月からスタートします。新任校長が学校経営を円滑に進めていくためにどのようにしたらよいか、心構えから具体的な業務まで月ごとにポイントを分かりやすく解説していきます。

また、「学校管理職の危機マネジメント」は、月ごとの危機マネジメントに焦点をあてて、アドバイスしていきます。

最高責任者として歩み出す

4月1日、辞令を受けて配属された学校へ赴任する。こんな学校を創りたいという強い思いを抱いている。一方では、どんな学校、どんな子どもたちだろうか、教職員は協力してくれるか、保護者や地域の人々は歓迎してくれるかなど、期待と不安が混じって校門をくぐったことであろう。

いよいよ校長となっての第一歩である。これまでも副校長・教頭として学校経営に参画してきたが、これは補佐としての立場である。後ろには校長が存在した。自らが校長、最高責任者となると、校内で最後に頼る者は自分1人で、後ろには誰もいない。覚悟と認識、準備を確認しておこう。

さて、4月は、子どもや教職員をはじめとするさまざまな人々や関係機関等との出会いがある。自らの教育哲学や教育方針を発信しながらも、これらの人々などとの多彩な出会いを大切にする出発となるように努めよう。

伝統を引き継ぎ未来を開く学校との出会い

赴任する学校理解の第一歩は、校名、校章、校歌にある。これらには地域の人々や設置した教育委員会などの思いや願いが込められている。校章はこれらを抽象化して示すシンボルである。折りにふれてその意味と誇りを子どもに意識させる。校歌は、校名・校章に込められた思いや願い、夢や希望を具体的に歌いあげるものである。これらの由来や背景、込められた意味や願いは引き継がれていくものであり、引き継ぐ責任がある。

この他に、学校沿革史等や前校長との引き継ぎから、学校が大切にしてきたものをしっかりと受け止め引き継ぐように努める。一方、今日の学校は新しい時代や社会を開きつくる子どもを育てる場でもある。20年後、30年後に社会、世界で活躍する子どもを育てるのが学校である。

熱心に教育に打ち込む教職員との出会い

「校長が代われば学校が変わる」という期待は、校長が何でもかんでも自分の思いや考えで変えるということではない。まずは、その学校が大切にしてきた歴史や伝統、現在育んでいるよさを大切にし、さらに発展させることを表明する。加えて社会や時代の変化に応じて改善・向上させたい課題等を解決・実現していくことも伝える。一方で、教職員一人ひとりが、そして学校が組織としてミッションやビジョンをどのように受け止めているかを把握するとともに、本校の子どもの教育の取り組み方、教員一人ひとりの力量、組織としての能力、その向上心や努力の状況を理解し把握するよう努める。

4月当初に、校長として学校経営の目標や経営方針を示し、教職員に理解と協力を求める。これは簡潔に行うようにする。企業では3分という声もある。経営ビジョンや経営方針を簡潔明瞭に示す。「夢を育み、子どもが主役の楽しい学校」「わかる・できる・つかう・つくる学習指導」「安全・挨拶・集まり・後始末の生徒指導」などと視点を明確にし、覚えやすいように示す。これらを実践するのは子どもの教育に打ち込む教職員である。

学校が大好きな子どもとの出会い

子どもは子どもなりに自分たちの学校に誇りを持ち、自慢する気持ちを持っている。したがって、いきなりそれらを変えられたり否定されたりすると、反発を感じて素直には従わない。

子どもたちがこの学校のどんなところが好きなのか、どんなところが自慢なのかや、自分たちががんばっているところなどを子どもとの触れ合いの中からしっかり見取り、聞き取り、感じ取るようにする。

そうしたことを大切にする校長が来たということを実感できるように、笑顔で触れ合うようにしたい。始業式、入学式での式辞や講話もこうしたことを大切にして内容を工夫し、校長自らもこの学校を大切にする思いを伝えたい。

子どもを大事に育てる保護者との出会い

保護者との出会いで大切にすることは、話をよく聞いてくれる・相談にのってくれる・笑顔で対応してくれるなどを実感できるように努めること。次に、保護者に発信することは、学校名、校章、校歌に込められた保護者や地域の人々の思いや願いを受け止め応じること、一方で社会や時代の変化に応じ子どもの未来を開く教育を進めること、そして、それらは保護者が求めるものと共通することが多いことを具体的に伝えるようにする。さらに、子どもにとって一番よいことを保護者と一緒に考えて教育を進めることを約束する。

学校を大切にする地域の人々等との出会い

地域の人々や卒業生・同窓会などは地元の学校を大切にし、子どもたちをさまざまに見守ったり育んだりしている。
また、地域の人々は学校を拠点として文化やスポーツなどの活動、健康維持の活動などを展開している。さらに、学校は地域の警察署や消防署、保健所、図書館や諸文化施設等との関係も深い。

年度当初にこれらの人々は、今度はどんな校長が来たのかと興味・関心を持って待ち構えている。これらの人々とのかかわりを大切にし、共に子どもを育て地域を大切にする旨を明確に伝え仲間入りさせてもらうようお願いする。

学校を見守る教育委員会との出会い

公立学校は、設置者である教育委員会の出先機関・現場と言えるものであり、校長は教委からいろいろな権限等を委任され責任者として管理したり執行したりする。したがって、教委との連携・協力は欠かせない。

教委とは必要に応じてかかわることになるが、その組織や担当者などについて実見し、把握しておくことも必要である。また首長・教委が掲げる教育目標や教育方針を踏まえて学校経営目標や経営方針を立てるようにする。いずれにしても学校と教委は一体であることを認識しておく。

新しい時代を開く学校経営との出会い

自らの学校経営が船出する。その目指すところや方向性は確立しているだろうか。学校経営ビジョン、その実現の方策や計画・工程表はできているだろうか。今年のことだけではない。今日の教育改革の状況を踏まえた展望や計画を示すときである。

現在、中央教育審議会が次期学習指導要領改訂に向けた審議を行い、平成32年度から新学習指導要領に基づく教育課程が全面実施となる。この間、移行期間となり、移行措置が行われる。これにそって教育目標の見直しや「社会に開かれた教育課程」を理念とする新教育課程の編成を行う。また、これが実現できる教師のアクティブ・ラーニングなどの力量アップ、カリキュラム・マネジメントの確立、チーム学校を実現できる教師等の資質能力の向上などが求められている。これらをどのように実現していくかが校長のビジョン、マネジメントやリーダーシップの発揮に期待されている。

新しい時代を開く学校経営との出会いである。

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