【連載】教育現場の課題をひもとく 「特別の教科 道徳」への準備③ 問題解決的な学習のすすめ方

元全国小学校道徳教育研究会会長 馬場喜久雄

1.指導の配慮事項

指導の配慮事項について解説書では、「道徳教育推進教師を中心とした指導体制」「道徳科の特質を生かした計画的・発展的な指導」「児童が主体的に道徳性を養うための指導」「多様な考え方を生かすための言語活動」「問題解決的な学習など多様な方法を取り入れた指導」「情報モラルと現代的な課題に関する指導」「家庭や地域社会との連携による指導」と、いろいろ示されている。

ここでは、最近注目されている「問題解決的な学習など多様な方法を取り入れた指導」について述べる。

(1)問題解決的な学習

問題解決的な学習といっても、算数科や社会科における問題解決学習など、それぞれの教科の特質がある。道徳科における問題解決も道徳の特質を生かしたものでなければならない。つまり、道徳科における問題とは、単なる日常生活の諸事情における問題ではなく、道徳的価値に根ざした問題でなくてはならないのである。

道徳科における問題解決的な学習とは、ねらいとする道徳的な諸価値について、自己を見つめ、これからの生き方に生かしていくことを見通しながら、実現するための問題を見付け、どうしてそのような問題が生まれるのかを調べたり、他者の考え方や感じ方を確かめたりと、物事を多面的・多角的に考えながら課題解決に向けて話し合うことである(解説書)。

6年生の「礼儀」について、具体例を示す。資料は「ヘーシンク」(文溪堂)。まず、事前に「礼儀」に関するアンケートを取り、その結果を導入で示す。教師は「礼儀が大切と答えている人は、100%に近いのに、礼儀正しくできている人が少ないのはなぜだろうか」と問う。資料は、ヘーシンク(64年開催の東京オリンピック、柔道金メダリスト)が、日本人に勝った場面が中心である。

ここで、解決のために子どもたちに投げかけるのは2つあり、どちらでもよい。「柔道場の畳の上には、審判と選手以外乗ってはいけないのに、喜んだ仲間が乗ろうとしたのはなぜか」。また「勝ってうれしいのに、乗ろうとした人たちを止めたヘーシンクの気持ちはどんなだったか」と発問して話し合わせる。前者は、礼儀を分かっていてもうれしさが先に立ってしまった人間理解であり、後者は、礼儀とは大切なものだと強調する価値理解である。

また、展開後段でも「礼儀を守れなかったことはあるか。それはどうしてか」などの発問で振り返らせる。

(2)道徳的行為に関する体験的な学習を取り入れる工夫

実際に具体的な道徳的行為をして、礼儀のよさを考えたり、親切について考えを深めたりする。しかし、体験的行為をすることが目的ではない。やってみることで、そのときの気持ちなどを学んだことから、道徳的価値の意義などについて考えを深めなければ意味がない。

また中心資料の登場人物の行動をやってみる動作化や、即興的に演技をして考える役割演技なども考えられる。

(3)特別活動等の多様な実践活動を生かす工夫

道徳科において、計画的に行われる体験活動を生かすのは大切である。体験活動で考えたり感じたりしたことをもとに話し合いを行うことで、ねらいとする道徳的価値の自覚が深まるとともに、道徳的実践を主体的に行おうとする意欲や態度を育むことができる。

また特に特別活動においては、道徳的実践を行う場が多いと考えられる。意図的・計画的に道徳的実践を意図した実践活動や体験活動が行われれば、その体験をもとに道徳科で話し合いを深め、考えを深めることが有効である。