【連載】校長のパフォーマンス 第61回 チーズはどこへ消えた?

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

『リーダーシップの名著を読む』(日本経済新聞出版社2015)という解説本を読んでいたら、その1冊にスペンサー・ジョンソンの『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社2000)が選ばれていた。

この本には特に思い出があって、私がベネッセに勤務していた最初のころ、当時の福武聰一郎社長が社員全員に配っていた。「ビズネス寓話」で、たいへん面白かった。

あるところに2匹のネズミと2人の小人が住んでいた。彼らは、毎朝早く起きて、迷路になっている道を走り回ってチーズを探していた。ネズミも小人も独自のフットワークでチーズを探していたが、ある日C地区で大量のチーズを発見する。

それから毎日、ネズミも小人もC地区に通ってチーズを満喫する生活を送りはじめた。チーズは大量にあって、その生活はいつまでも続くように思われた。

ところがチーズはある日、突然消えてしまうのである。

小人は、その現実を受け入れがたく、その場にまたチーズが現れるのを期待する。ネズミは「チーズが無くなった。次を探そう」と行動を直ちに変える。しかし、小人は動かない。今までチーズはそこにあったのだから、そこにまたチーズの山ができるのではないかと夢想する。他の迷路を探す苦労を避けて、その場にしがみつく。

しかし、チーズは現れない。一方、ネズミは迷路を駆け回っている。やがて、小人は痩せ細って、ついに「状況は変わった」ことを受け入れる。「自分も変わらないと」と考えて恐怖心でいっぱいになりながら迷路を走りまわるようになる。

そのとき、チーズ探しで走り回ることに快感が生まれてくる。いつ、どんなチーズを探しあてるか、楽しみの感覚である。そして、ついに小人は今まで見たこともないチーズの山を発見する。そこには先に発見したネズミが手を振って迎えてくれていた。大きなチーズ腹で。

この寓話のように、人間は環境に安住すると環境自体が変わり始めても気付かないことがある。むしろ、変わることがおかしい、と思いはじめたりする。しかし、寓話のチーズも、気を付けて見ていれば確実に少しずつ変わり始めていたのである。その変化の予兆に目を向けないで、今までのやり方に固執していたのが小人である。

教育の世界はどうか。多くの校長や教員は教育の仕事が大きく変わろうとする予兆を感じているであろう。しかし、感じるだけでなく、新しい教育実現に対応する方略や力を今から獲得していくことが必要である。「自分も変わらないと」という自覚が大切である。

時代の歩みに即応して、自らの力を高めるために「新しいチーズ」の発見に出かけるべきである。

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