【連載】次期学習指導要領改訂への期待 1 総則重視と環境づくりに期待

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

1.「総則」の位置付け重視に期待する

次期学習指導要領の告示まで1年をきった。昨年8月に中教審教育課程企画特別部会がそれまでの審議経過を整理した「論点整理」を示し、以降、各校種別、各教科等別のワーキンググループでの議論が進められ、その状況はその都度発信されている。今後、審議を煮詰め中間まとめが出され意見聴取等の後、さらに答申に向けて審議が行われる。

そして、平成29年が明けてから答申が出され、ややあって新学習指導要領が告示されるようである。

したがって、現段階では、学習指導要領改訂作業の基礎工事といわれた「論点整理」を基にして次期学習指導要領への期待を述べることにする。

「論点整理」では、次期学習指導要領について構造的な見直しを行うとし、教育課程について「何を知っているか」という知識の内容を体系的に示した計画に留まらず、「それを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」までを視野に入れたものにするとしている。

学習指導要領を構成する各教科等においては、学ぶ意味、身に付ける力、教科等の本質を明らかにする。一方で、教育課程全体でどのような資質・能力を育成していくのかを明らかにする。さらに、発達の段階に応じた縦のつながりと、各教科等の横のつながりを行き来しながら学習指導要領の全体像を構築するとしている。

こうした教育課程の相対的な構造を可視化するのを重視し、教科等を束ねる通則的な規定である総則の意義が極めて重要になるとしている。すなわち「各教科等をつなぎ教育課程の全体像を示す重要な役割」は、これまで以上に重要になるとしている。

このように次期教育課程では、「論点整理」が示した「社会に開かれた教育課程」「アクティブ・ラーニング」「カリキュラム・マネジメント」等のあり方や方向性を総則に示すということであり、総則が教育課程の重要な要となるということである。これまでの各学校では、教育課程というとらえ方よりも、どちらかというと時代遅れの教科課程にいまだ留まっていたのではないか。いわば総則を踏まえていない、総則を大事にしていないともいえよう。

したがって、各学校の教育に統一性や一貫性が薄く、体系的な教育が組織的に行われていない状況に陥り、教師ががんばっているにもかかわらず教育の成果が十分に上がってこない実態があったのではないか。今回の改訂で、総則重視の視点が広がることで、この問題が解決されるのではないかと考える。総則重視の実現を期待する。

2.理念を実現する環境づくりに期待する

もう一点期待しているのは、「理念を実現する環境づくり」である。時代の変化に対応すべく「知識・理解」の獲得に加えて「資質・能力」の育成を重視し、新たな社会や時代を創っていける子どもを育成するこれからの教育課程の理念を、絵に描いた餅に終わらせてはならない。

教員の研修の機会の確保、新たな学習・指導方法等に対応するために必要な教職員定数の拡充、ICTも含めた必要なインフラ環境の整備、教員以外の専門スタッフも参画した「チームとしての学校」の実現による複雑化・多様化した課題の解決や教員が子どもと向き合う時間的・精神的な余裕の確保、学校運営を「コミュニティ・スクール」やさまざまな人材との連携等を通じて地域で支えていくこと等々。

「社会に開かれた教育課程」の実現には、学校・教師を支えるさまざまな環境づくりが必要であるのは「論点整理」が指摘しているとおりである。かつて「米百票」の話で期待をもたせた政治家がいたが、百票の絵を見せただけで終わったことがあった。繰り返してはならない。中教審の各答申の実現、教育振興基本計画による着実な実施により環境づくりの実現を期待する。

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