【連載】国際バカロレアを知るために 第26回 PYP(IB初等教育プログラム)

都留文科大学特任教授 武蔵野大学教育学部特任教授
リンデンホールスクール中高学部校長 大迫弘和

 

前回に引き続き、3歳から12歳までが対象で、幼稚園・小学校段階で実施されるIBプログラム「PYP」についてです。

PYPは「フレームワーク」です。枠組みさえ守っていれば、あとは自由に各国・各校の事情に合わせたカリキュラムを組んでよいことになっています。日本語で授業を行うのも可能です。

今回は特に、幼稚園でのPYPの実施について見てみることにします。

まず日本の『幼稚園教育要領』の5領域を確認してみましょう。

(1)心身の健康に関する領域「健康」(2)人とのかかわりに関する領域「人間関係」(3)身近な環境とのかかわりに関する領域「環境」(4)言葉の獲得に関する領域「言葉」(5)感性と表現に関する領域「表現」

次にPYPの学びの核になる6つのテーマによる「探究の単元 Unit of Inquiry(略称UOI)」を見てみましょう。

(1)Who we are=私たちは何なのか
(2)Where we are in place and time=私たちはどのような時代と場所に生きているのか
(3)How we express ourselves=私たちはどうやって自分を表現するか
(4)How the world works=世界のしくみ(世界はどう動いているか)
(5)How we organize ourselves=私たちは自分たちをどう組織しているのか(社会の構造)
(6)Sharing the planet.=地球を共有すること

PYPが「フレームワーク」であるというのは、この6つの「探究の単元」の中で「幼稚園教育要領」の5領域を実施すればよいということです。

例えば「How we express ourselves=私たちはどうやって自分を表現するか」というUOIの中で5領域の中の言葉の獲得に関する領域「言葉」や感性と表現に関する領域「表現」を実施するのは難しくありません。「How we organize ourselves=私たちは自分たちをどう組織しているのか(社会の構造)」というUOIの中で、人との関わりに関する領域「人間関係」や身近な環境との関わりに関する領域「環境」を実施するのも難しくはないはずです。

それ以上に重要なこととして、本紙4月11日付1面「鉄筆」欄にも触れられていましたが、幼稚園教育要領の改訂を見据えての中教審幼児教育部会でアクティブ・ラーニング(AL)に強い関心が集まっています。委員の発言として「鉄筆」でふれていた「ALでは『深い学び』『対話的な学び』『主体的な学び』が重視されている。『主体的な学び』でいえば、自発的な活動である遊びが学びの中心になる。ここが幼稚園教育の中心になる」という捉え方は、まさにALのモデルプログラムといえる国際バカロレア教育が、日本の幼稚園教育と重なっているものであるのを示しています。

即ちIBとは、私たちにとって決して未知のプログラムではなく、既にこの国で実施されていた教育をより高次な形で再構成するためのプログラムであるといえるのです。これまでの教育をベースに、児童生徒の未来により有益な教育を組み立てていくためのプログラムなのです。