【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南②

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

5月 ビジョン・方針阻害要因の発見
慣れる前に課題解決を図る
連休明けの再スタートを円滑に

新任校長としての学校経営がスタートして1カ月が過ぎた。ゴールドの連休か憂鬱な連休か、どちらであっただろう。どちらにしてもこの期間になすべきことをしっかりとやり、連休明けの再スタートを円滑に切り、笑顔で再開・再会したいものである。

4月は、本欄に示したように、子ども等のさまざまな人々や関係機関などとの出会いから、今後の学校経営に生かしたい「よさや強み」を見いだしたことであろう。

次いで、5月は、自己の学校経営ビジョンや方針の実現を阻害すると思われる要因を見いだすようにする。とかく問題や課題は目につくものであるが、日が経つにつれて慣れてしまう恐れがある。はじめの1カ月が重要である。思いつきではなく、ビジョン・方針に沿ってきちんと整理することが必要である。

子どもの課題は何か

学校経営ビジョンおよび学校経営方針は全て子どものため、子ども第一にして立てているものである。では、その子どもの健やかな成長を阻害しているものは何か、それを子どもの姿から探ってみよう。心の面から、明るく元気でない子はいないか、のびのびとしているか、仲がよいか、きまりや約束を守れずルーズな生活になっていないかなどを把握する。

体の面からは、朝会等で倒れる子はいないか、欠席の状況はどうか、給食の残滓が多くないかなど。そして、学力の面では、基礎・基本の習得で遅れている子はいないか、活用する力はどうか、思考力・判断力・表現力の状況はどうか、これまでの学力・学習状況調査の結果はどうなっているか、学習意欲が低くないかなどを把握する。さらに全体とともに、個々の子ども、これらが特に課題となっていたり、指導に困難を生じていたりする子どもはどの子かなどを把握し、それぞれの要因を探って明らかにし整理しておく。

教職員の課題は何か

学校経営ビジョンおよび学校経営方針を理解し、それに即して子どものための教育実践を進めるのは教職員である。したがって、教職員の教育指導、職務行動においてビジョン・方針の実現を阻害する要因の把握が重要である。

教職員でビジョンや方針に関心を示さないのは誰か。職場の雰囲気をギスギスさせたり、勝手な行動をしたりする者はいないか。授業や学級経営の力量は安心できるものであるか。心配な状況の者はいないか。5月に入ると、自己申告に基づき面談や授業観察・職務行動観察を行う。一人ひとりの教職員を理解するのに絶好のチャンスである。ビジョン・方針を視点にしながら、一人ひとりの思いや願い、考えや意見、悩みや困っていることなどを聴く、一方で、これまでの観察から気になることがあれば質問し話し合って、誤解が生じないよう配慮することも必要である。

保護者の課題は何か

子どもの学習や生活の背景には保護者が存在し、家庭生活での問題の状況を把握することは重要である。着任早々、PTA・保護者会の役員などとの出会いや保護者会などにより全体の雰囲気や協力の状況などは見えてこよう。

これらが子どもの教育に資するものとなっているのか、はたまた阻害要因となるものがあるのか、活動状況や参加状況から見取るとともに、副校長・教頭や各主任、PTA担当教員などから情報を収集する。

個々の保護者の中には、当人または周囲との人間関係で学校との関係がうまくなかったり、こじれていたりなどや、虐待の恐れや実態などもあり、これまでの経緯や対応の仕方なども含めてきちんと把握しておくようにする。

その際、個人情報に十分に配慮する。

地域の課題は何か

学校の教育指導に協力してくれる地域の人々は多数存在する。地域は教材の宝庫であり、学びの場である。しかしながら、時にそれを阻害する要因が生じていることもある。

学区内での町会同士のいがみ合い、スポーツ団体の過剰な競争意識、遊んでいる子どもへのいわれのない叱責や時には暴力を振るう人の存在、交通や犯罪に関する町全体の安全・安心の問題など。学校によっては、異常な注文や苦情提供者がいることもある。これらについては、生徒・生活指導主任や地元警察の関係者などから、状況や実態を把握しておくようにする。地域によっては、さまざまな地域行事が諸団体により年間通じて隙間なく組まれ、校長の出席を求めることもある。これらへの対応も考えておかなくてはならない。

関係機関等との課題は何か

これはひとことで言えば、連携協力体制ができて日常的な関わりが円滑に進められているか、非常時に迅速に対応が取れるかなどを把握することである。

相手も人であり、ともすると人が代わるとこれまでの関係が崩れたり連携に齟齬が生じたりすることもある。

校長自らが阻害要因とならないよう十分に配慮して関係機関・者と関わるようにする。

課題メモの作成・解決案の提示

以上の各視点から阻害要因を発見したら、それについてどのように今後取り組むか、改善するかを早急に整理してメモに表すようにする。「課題メモ」の作成を勧める。

まず、阻害要因における課題を具体的に表現する。いくつ出てくるだろうか。4月には40や50は出てくるかも知れない。これまでにメモしたことも含めて全部書き出す。次にこれにいつ対応するかを仕分ける。「すぐ対応する」「半年以内に対応する」「本年度内に対応する」「次年度に対応する」など、ビジョン・方針をもとに対応の先後の決断をする。課題メモには、課題とともに具体的に取り組むことも案としてメモしておく。

例えば、4月の全校朝会が時間内にいつも終わらず、授業時間にくいこんでいることを課題に思ったら、別記の例のようにメモする(左上囲み)。これらを方針に位置づけ学校づくりを具体的に進める。

課題「全校朝会を時間内に終わらせる」
▽教師が先に整列している
▽子どもの5分前行動を徹底する
▽時刻になったらはじめる
▽校長の話は3分以内
▽「気をつけ」「前へならへ」を言わない
6月の確認・見通し

校長等のリーダーは執行管理のみならず先の見通しを付けることが重要な仕事である。

教育は意図的、計画的、組織的な営みである。全員がビジョン・方針を共有し協働して取り組むよう、1学期後半、少なくとも1カ月先をどのように経営・運営していくかを明確にしてリードすることが必要である。

5月末には6月の見通しが立つようにしよう。

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