【連載】教師のための人間関係づくり 第12回 管理職の言葉がけが教師支える

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富祥彦

 

○多様な人間関係に苦しむ教師たち

私は、「教師を支える会」代表として、これまで多くの教師の悩みを聞いてきました。

うつ病に苦しんだり、志なかばにして教師を辞めていく方も少なくありません。そして、そうした教師の多くが、さまざまな人間関係の問題に悩み苦しんでいます。

教師に反発し、「くそじじい」「くそばばあ」などとののしる子どもとの関係。

逆に、心を閉ざし、なにも語ってくれない子どもとの関係。

教師にクレームをつけるのを、生きがいにしているかのような保護者との関係。

世代や価値観の違いにより、衝突が絶えない職場での人間関係。

こうしたさまざまな人間関係に頭を悩ませ、苦しんでいる教師が少なくないのです。

○校長・教頭のあたたかい言葉こそ

では、そうした難問を抱えている教師を支えているものは、何でしょうか。

それは、同僚同士の人間関係であり、また管理職からのあたたかいサポートです。

さまざまな悩みを抱える教師でも、あたたかい職員室に支えられれば、なんとかしのいでいくことができる、というのが、私の実感なのです。同僚の教師同士の支えあいがあれば、あるいは、管理職からのあたたかいサポートがあれば、困難に直面しても、なんとかしのいでいくことができる教師が多いのです。

これが、長年にわたって教師のサポート活動を展開してきた私の、いちばんの実感なのです。

また、私が「教師を支える会」代表として多くの先生方の悩みをお聴きしているうちに気づいたことの一つに、「教師にとって校長・教頭という存在はこんなにも大きなものなのだ」ということです。

学級崩壊や保護者からの攻撃で傷つき、私のもとを相談に訪れた教師がこぼされました。「校長は、あの時、私を守ってくれませんでした」「もっと子どもや保護者の心をつかんでくれなくては、と抽象的な説教を繰り返すばかりでした。それができないから困っているのに……」

そして、この傾向は、学校段階を降りていくほど大きなものになるようです。高校の先生方にとって、校長は本音を言うと「いてもいなくても変わらないような存在」と映っている場合が少なくないようです。

一方、ある小学校の先生は「校長は、ぼくたちにとって、父親のような存在です」とおっしゃっていました。小学校の教師にとって、校長や教頭などの管理職は、それほどまでに大きな存在なのです。

したがって、校長がどのような人であるかによって、小・中学校の雰囲気や教師のやる気はずいぶん変わってきます。

では、どんな校長・教頭が教師にとって理想かといえば、頼りがいがあり、同時に、一人ひとりの教師の言い分に耳を傾けてくれる校長・教頭です。
リーダーシップとカウンセリングマインドに富んだ校長・教頭です。

○「あなたなら、できますよ」

ある中学校で、担任を非難する保護者が押しかけてきました。そこで校長が登場しました。

「この先生を信頼して担任を頼んだのは私です。ですから、苦情があるのでしたら、担任ではなく、私におっしゃってください!」

こんな親分肌の校長がうちにいてくれたら、どんなにいいかと思っておられる先生方も少なくないはずです。

このように、校長・教頭の発する一言は、教師のやる気を大きく左右します。校長・教頭が、一人ひとりの教師のやる気を引き出すような、うまく「勇気づける言葉」を使うことができる人であれば、教師のやる気はぐんぐんと引き出されていきます。

一方、校長・教頭が言葉に鈍感で、教師のやる気をそぐ習慣がついてしまっていると、職員室の雰囲気はどんどん悪くなってしまいます。

たとえば、次のような言葉です。

「どうしてそうなるのかな」

「何度言っても分からないんですね」

「教師としての資質の問題ですね」

こうした心ない言葉を管理職が平気で吐いていると、その学校の教師の意欲は、どんどん削がれてしまいます。

「よし、今日も1日、力を合わせてがんばりましょう」

「この学校の先生方ならできると、私は信頼しています」

「あなたなら、できますよ」

校長・教頭のこうした「信頼と期待の言葉がけ」、アドラー心理学のいう「勇気づけ」の言葉がけによって、教師の意欲は引き出されるのです。