【連載】次期学習指導要領改訂への期待 2 行政の条件整備に期待

教育新聞論説委員 細谷美明

 

次期学習指導要領の青写真は、平成28年度中に出されるとされる中教審答申によって明らかになるが、その概要は、昨年8月に公表された教育課程企画特別部会によって示された「論点整理」でほぼ把握ができる。「論点整理」の構成は、「1.2030年の社会と子供たちの未来」「2.新しい学習指導要領が目指す姿」「3.学習評価の在り方」「4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」「5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性」からなる。

この中で、中学校に関して私が着目するのは、現行の学習指導要領とほぼ同じ方向性である点だ。キーワードで示せば、「バランスのとれた学力の育成」「言語活動の充実」「生きる力の一層の具体化・浸透」などである。これは、改訂のたびに大きな内容変更のあった過去に比べ、現行の学習指導要領のもとに各学校で行われている教育活動が、国内外で行われている各種学力調査結果等からも明らかなように、大きな成果をあげている背景があることはいうまでもない。

ただし、21世紀は知的基盤社会であり、グローバル化や情報化等により将来の予測ができない時代という認識は変わらないものの、「教科等を学ぶ本質的な意義を大切にしつつ教科等間の相互の連携によりそれぞれ単独では生み出し得ない教育効果をもたらす教育課程を目指す」とし、これまで以上に学校が「社会に開かれた教育課程」を編成・実施する点が強調されている。

また「論点整理」は将来の国や社会を担っていく子供たちに育成すべき資質・能力として、次の3つの柱を示している。

(1)「どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか」(主体性・多様性・協調性や学びに向かう力、人間性など)
 (2)「何を知っているか、何ができるか」(個別の知識・技能)
 (3)「知っていること・できることをどう使うか」(思考力・判断力・表現力等)

これらが総合的に構造化された学習指導要領の策定を目指すとしている。そして、この3つの柱からなる資質・能力の育成のために校長が自校の教育課程において留意しなければならない2つのキーワードが「アクティブ・ラーニング(=授業改善)」と「カリキュラム・マネジメント(=組織運営の改善)」ということになる。

こうした次期学習指導要領の方向性を確認しつつ、これからの本格的な策定作業において期待することを2点あげたい。1点目は、学校が今後、アクティブ・ラーニングを核とした授業改善を進めていく上で、国や教育委員会が行うべき必要な条件整備の点である。2点目は、特に校長をはじめとする管理職がカリキュラム・マネジメントを円滑に進めていくために必要な国や教育委員会が行うべき必要な条件整備の点である。

1点目のアクティブ・ラーニング推進のための条件整備について「論点整理」は、授業改善の視点として、(1)習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置きつつ深い学びの過程が実現できているか(2)他者との協働や外界との相互作用を通じて自らの考えを広め深める対話的な学びの過程が実現できているか(3)子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み自らの学習活動を振り返って次につなげる主体的な学びの過程が実現できているか――の3つを掲げている。

つまり、こうした「質の高い深い学び」のできる子供を指導することがこれからの教師に求められているのである。

これまでもPISAに関連してOECD側から日本の教師の献身的な努力と高い指導力は評価されているところだが、今後、若い年齢層の教師が増加し指導者層である50代の教師が減少する状況の中で、学校の自助努力だけで教師の高い指導力の育成・維持は容易ではない。特に、「質の高い深い学び」につながる言語活動の充実について、これまでの調査等で中学校において大きな課題となっていることは事実である。
 
(細谷論説委員によるこの稿は第4回に続く)