【連載】教育現場の課題をひもとく 問題行動の現状と課題・不登校編② 状態理解し援助を見極める

神田外語大学教授 島﨑政男

 

不登校対応の第一歩は、「脱・不登校」への危機意識を高めることであるが、次の一歩は不登校問題への理解である。不登校児童生徒が「どのような状態」にあり、「どのような援助」を必要としているかを正しく見極める(アセスメント)ことが重要である。

m20160519_02不登校の要因・背景は多様であるが、他の問題同様「コップ論」(図1)で理解することができる。コップの水があふれ出すと問題が発生(症)するとたとえると、コップの水の流出は元々あった原水(発達特性等)に新たな水(誘因1)が加わったときと考えられる。事例によっては、コップを傾ける力(誘因2)や原水と入水が混じることにより一気に増量する働き(触媒機能)を想定する必要がある。

不登校問題が注目され始めた昭和30年代半ばころは、原水(特に本人の神経症的性格)に焦点を当てた研究が多くみられ、「学校恐怖症」「登校拒否症」との呼称が一般的であった。

その後、次第に児童生徒を取り巻く環境等に目が向けられ、調査での定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし病気や経済的理由によるものは除く)」とされている。

m20160519_02-2要因・背景の理解には、不登校をめぐって生じる「5つの力」(図2)からの解明も必要となる。基盤となるのは児童生徒の発達・行動特性等、本人のもつ特質である。これを「0」としたのは、不登校へとつながるか否かは、他の4つの力の影響が大きく関わるためである。1の力は「家庭が児童生徒を学校に送り出す力」を表す。第2.期「増加期」のころから、「無理して学校に行くことはない」との考え方が広がり始め、今は「学校に行くのは当たり前」との意識が希薄になっただけでなく、「学校拒否論」が展開されるようになった。なお、児童虐待(ネグレクト)の観点から、この力を吟味する必要もある。養育放棄の一環としての不登校には、早急な司法的・福祉的介入が求められる。

2は、「学校が児童生徒を引きつける力」を示している。平成4年に発表された学校不適応対策調査研究協力者会議報告の副題は、「児童生徒の『心の居場所』づくりを目指して」である。すべての児童生徒が笑顔で通える学校づくりは、学校経営方針の大きな柱の一つである。不登校対策においても、ユニバーサルデザインは必要かつ有用である。

3は、「学校が登校意欲を阻害してしまう力」である。先の報告書には「学校生活上の問題が起因して登校拒否になってしまう場合がしばしば見られる」との記述がある。いじめ撲滅や体罰厳禁等、「学校病理論」の払拭に努めなければならないことは当然である。一方、「葛藤なき不登校の増加」を指摘する声も多い。このような観点にも留意したい。

4は、「家庭が児童生徒を引き寄せる力」のことで、第Ⅰ期「平準期」では分離不安等の専門用語で説明されることが多かった。簡潔に表現すれば、「学校より家庭に居たい」という気持ちを指す。不登校対応策の一つ「学校の家庭化」はこの力に着目したものであるが、その進め方については異論も聞かれる。