【連載】教育現場の課題をひもとく 問題行動の現状と課題・不登校編③ 過去と他校の事例に学ぶ

神田外語大学教授 嶋﨑政男

 

危機管理の3段階5機能に則ると、不登校の危機管理は、リスクマネジメントにおける自己有用感等の涵養(開発的)および予期不安等の早期発見(予防的)、クライシスマネジメントにおける教育相談・家庭訪問等(問題解決的機能)や専門機関との連携(治療的機能)、そして、ナレッジマネジメント(他の事案に学ぶなどして再発防止を図る)という流れになる。

リスクマネジメントの根底に据えたい基本的姿勢は、平成15年に出された「不登校問題に関する調査研究協力者会議報告」の冒頭において、「不登校については、特定の子どもに特有の問題があることによって起こることではなく、どの子にも起こりうることとしてとらえる」と明確に述べられている。
同報告書では、「児童生徒が不登校とならない、魅力あるよりよい学校づくりのための一般的取組」という節をおこし、次の6点の具体的方策を示している。未然防止策として指導計画に取り入れる必要がある。

(1)社会性の育成や人間関係づくりを目指した多様な取り組みの展開(2)開かれた学校づくりの推進(3)きめ細かい教科指導の実施(4)学ぶ意欲を育む指導の充実(5)安心して通うことができる学校の実現(6)児童生徒の発達段階に応じたきめ細かい配慮――の6点である。

クライシスマネジメントには、不登校解消を目指す学校内外で行われるあらゆる取り組みが含まれる。左図にその一部を示した。

不登校児童生徒の指導・支援
不登校児童生徒の指導・支援

学校での取り組みでまず考えなくてはならないのは、「実践」である。「登校拒否は誰にでも起こりうる」(平成4年「協力者会議報告」)、「ゆっくり時間をかけて取り組む」(平成8年「中教審第一次答申」)、「ゆとりを持って対応する」(平成10年「中教審答申」)などは、一部の学校で、「様子をみる」「登校刺激は避ける」の提言を「何もしないこと」と曲解した。このため、平成15年の報告書では「ただ待つだけでは、状況の改善にならない」とし、「働きかけることやかかわりを持つことの重要性」が強調された。
「まず動く」、それが学校に求められる重要なポイントである。

具体的な取り組み方法については、文部科学省の通知・資料をはじめ、市販の書籍など膨大な量の実践事例が紹介されている。これらを参考に、個々の教員が資質向上を図るとともに、校長のリーダーシップの下、コーディネーターの育成や不登校対策委員会の活性化を通して、校内体制を整備することが求められる。

ナレッジマネジメントは、主として他校の事例から問題の要因・背景、対応、配慮事項等を共通理解し、自校における同様の事故・事件等の発生を防ぐはたらきをいう。例えば、川崎中学生殺害事件の折、文科省は「児童生徒の安全に関する緊急調査」をいち早く実施したが、調査依頼がある前に同様の趣旨の手立てを講じた学校はどのくらいあっただろうか。これこそがナレッジマネジメントで行う管理職の決断である。

ナレッジマネジメントは、成功事例でも活用できる。「欠席の日に連絡・3日欠席で家庭訪問」を実践した学校の不登校が減少したとの報道を受け、自校の実践に取り入れた、などの事例がある。過去・他校の事例に学ぶ姿勢は、常に持ち続けたい。

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