【連載】クオリティ・スクールを目指す 第78回 福井県の教育力を探る

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

伝統が育む学校文化の強靭さ

全国学力調査が始まって以来、秋田県や福井県は成績トップ層を維持してきた。この2県は、なぜ高成績を維持できるのか、そのヒミツを知りたいという思いは、多くの教育関係者は抱くであろう。その情報は、これまで断片的に伝えられたが、今回『福井県の教育力の秘密』(学研2015)が発刊されて、多くのヒミツが明らかになった。

国研の千々布敏弥総括研究官の監修であるが、執筆者は他県からの派遣教員9人である。他県の教員という、同僚から見ての福井県の教育のあり方についての報告で、それだけに「すごさ」の発見は興味深い。

福井教育の優れた学校基盤は、「しなやかで高め合う協働」にあるという。教員同士のつながりがよく、教育実践を語り合える場として学年会や教科会を重視し、週1回設定している。その話し合いに基づいて、相互に啓発する雰囲気が高まり、指導力を高めていく。

そのつながりは、小中はもとより、幼小、中高も行われている。地域とのつながりも深い。

また福井教育には「凡事徹底」の思想があるのではないかと思える。例えば、あいさつ、整理整頓、生活時間などであるが、独自なものとして「無言清掃」がある。ほうきを使わず、雑巾がけだけで黙々と清掃する。永平寺の修行を連想させる。一方、体力もまた全国一で、運動の日常化が行われている。
特に際立った特長は、宿題への対応である。他県の3倍もある宿題が課され、それを毎朝提出させることで点検システムを合理化する。毎日、朝学習からスタートし、補充学習もみっちり行っている。

実は、こう書けば、かなりハードな指導体制のように思えるが、教員も子どもも極めて表情が明るいという。学校生活を楽しんでいる雰囲気が濃厚であるという。伝統が育む学校文化の強靭さである。

そこで私には、さらなる期待がふくらんでくる。例えば、秋田県は学習塾に行く子どもは全国最低、宿題を出すことも最低。それでいて子どもは復習や予習をしっかりとやってくるという。なぜ、このような子どもが育つのか。おそらく、福井教育にも似た実践はあるのではないか。

また次期教育課程に向けてアクティブ・ラーニングやカリキュラム・マネジメントなどの新たな論議が行われているが、そのような課題への取り組みをどう考え、どう実践しようとしているか、近未来に向けた教育実現について期待がある。

福井県は、教委と校長の関係が深く、校長は月に一度程度、全教員に教育の在り方を語るというが、その土壌があれば近未来への教育構想についての期待が高まるのである。高学力を支える指導基盤の確立のモデルとして、今後の在り方についても注視したいと考える。