【連載】教師のための人間関係づくり 第13回 傷つきやすい子のやる気引き出す

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富祥彦

 

○どのような言葉がけを心懸けるか

教師や親のちょっとした言葉が、子どものこころを知らず知らずのうちに傷つけ、やる気を失わせてしまっています。ある程度までは、それは仕方のないことかもしれません。人と人がふれあうとき、相手を傷つけずにすませることなど、不可能なのですから……。けれども、やはりできるだけ避けたほうがいいのは、いうまでもありません。

特に、最近の子どもたちは傷つきやすいです。そのため、自分が確実にできることしかしようとせず、不慣れなこと、自信のないことは可能な限り避けようとするところがあります。本来子どもは、苦手なこと、できないかもしれないことにあえてチャレンジしていくことで、たとえ失敗したとしてもその経験をバネにして成長していくものですが、それを回避してしまうのです。これでは成長のチャンスを自ら放棄しているようなものです。

勉強についても同様で、ほかの人ができている問題ができなかったり、テストの点数が予想よりもずっと悪かったりすると傷ついて、やる気をなくしてしまう子が少なくありません。「もういいや」と勉強を放り出してしまうのです。こんな傷つきやすい子どもたちを前にして、私たちはどのような言葉がけを心懸けるべきでしょうか。

○奮起させようとしているつもりでも

やる気をくじく言葉の代表格は、「何度言ったら、わかるんだ!」あるいは「何度やってもできないのかぁ!」です。この「何度言ったら……」という言い回しが、子どもの心に「ぼくは結局、できない子なんだ」「どうせダメな子なんだ」という否定的な自己イメージを生み、投げやりな態度を育んでしまいます。

小学校低学年の先生がよく使う言葉が「そんなことをする子は、先生は嫌いです!」。低学年の子どもは教師から嫌われては、とてもやっていけません。それがわかっていて言うのですから、ほとんど脅しです。

「おまえには、ガッカリしたよ」「おまえは、もういい」。部活動などで生徒が教師の期待を裏切ったときに、つい言ってしまう言葉です。しかしこの言葉で、子どもはこれまで自分のやってきたことのすべてが無駄であったと感じるものです。そして自分は、何をやっても無駄だ、と投げやりになるのです。

カウンセラーとして、子どもたちの言葉を聴いていると、彼ら彼女らが担任や部活の顧問の先生のちょっとした言葉にどれほど傷つき、またどれほど喜びを感じているか、ひしひしと伝わってきます。カウンセラーの言葉よりも、教師の言葉のほうがずっと重いのです。

教師は、子どもを叱咤して奮起させようとしているつもりかもしれません。けれども、多くの子どもはやる気をすっかりくじかれてしまいます。自分が何気なく使った言葉がどれほど子どもの心を傷つけてしまっているか。振りかえってみるといいと思います。

○少し軽みのある言葉を

一番大切なのは、傷ついた子どもの心をしっかり受け止めてあげることです。「みんなできているのに、自分だけ間違えちゃうのはつらいよね。くじけちゃうよね」とか、「あんなに頑張ったのに、目標より低い点数しかとれなかったのは、やっぱり悔しいよね。いやになっちゃうよね」と気持ちを受け止めてあげるのです。

子どもの発する否定的な感情をしっかり受け止めてあげると、時間が経つにつれて、こころにエネルギーが戻ってきます。「先生、ぼく、もう一回頑張ってみる」とチャレンジする意欲がわいてきます。

逆によくないのは、「なになに、こんな問題もできないの?」と、ただでさえ傷ついている子どものこころをさらに傷つけてしまうような言葉を吐くことです。「○○君だったらぜったいできるはずなんだけどなぁ」とその子への期待をストレートに伝える言葉も、ガッツのある子には効果的ですが、プレッシャーが強すぎて追い込まれてしまう場合も少なくありません。

「きっと、できるよ」「できる、できる!」

これくらいの、少し軽みのある言葉のほうが、心にスッと入っていくようです。

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