【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南③

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

6月
学校経営方針に沿った学校づくり 自らのカラーを具体的に出そう
学校経営ビジョンと方針の再確認

4月、5月が過ぎ、前任校長のすごさに驚く毎日か、なんとなく過ぎている毎日か、それとも前任者が残していった諸課題に振り回されている毎日か。あるいは、校長としての自分の力量に自信を感じるか、それとも力不足を感じるか。

とにかく、6月は自らのカラーを具体的に表現し、示していくときである。教職員等は、今度の校長は本気で学校をよくしよう、変えていこうと取り組むのか、その本気度を具体的な言動でじっとみている。この人はついていくだけの価値ある人かどうか測っていると見てよい。では、どうするか。

改めて、自らのビジョンと方針を確認しよう。自分の原点を忘れてはならない。そして、学校経営方針に沿った行動、言動で経営を体現することを意識してリードしよう。

八ヶ岳型から富士山型へ―方針・取り組みの先後の決断

年度当初、かくありたいと願い立派な経営方針を立てて示したことであろう。しかし、方針全てを横並びに実現しようと焦ってはならない。いっぺんには実現できない。何を重点にするか、何から取り組むか、先後の決断が必要である。

あれもこれもと欲ばる八ヶ岳型にすると、全員が努力したとしても力が分散され、エネルギーを注いだ割には成果がでてこない。結果的に疲労感や閉塞感が広がるということになりかねない。一方で、1学期はこのことに重点をおいて一致協力して取り組むようにする富士山型にすれば、全員の力が一つになり結果がついてくる。子どもも変化し変容する。教師はやりがい感や充実感を実感し指導に自信をもつ。

校長は、そのために、方針実現の短期(学期程度)、中期(年度内)、長期(3年程度)の見通しを立て、かつその中でも方針の先後の決断をしてビジョンの実現を目指すようにする。これらをしっかりと確定するのは夏季休業中でよいが、当面、仮説的に計画を立てて実行、実践を先頭に立ってリードしよう。

重点をキャッチフレーズで示す

どの方針にどのように取り組むのか。グダグダ説明するのではなく、一言で頭に入り、何をすればよいのかが見えるように、キャッチフレーズにすることを工夫したい。 

例えば「授業の充実」を重点にするのなら、「わかる・できる・つかう・つくる=おもしろい」などである。これは、次期教育課程においても重視される学習プロセスを簡潔に示したものであり、いくつかの学校がすでに取り入れている。基礎・基本の指導を確実に行う習得の授業、基礎・基本や既習経験を使って問題解決を指導する活用の授業、自分で課題を設定し主体的・対話的に問題解決する探究の授業である。子どももこうした授業展開がおもしろい・楽しいと感じて学習意欲が高まる――というもくろみを表現している。

生徒指導・生活指導を重点にするのなら、「あんぜん・あいさつ・あつまり・あとしまつ=ここちよい生活づくり」などである。順番にいえば、健康で安全な生活づくり、礼儀正しく気持ちのよい挨拶、5分前行動で素早く集まり静かに待つ、片付け・掃除を手際よくきれいにするということである。4つあることから、それぞれをいつやるか、または何からやるかということも先後の決断である。子どもの実態から工夫しよう。

この他にも「与えて・させて・見回る指導と、聞いて・助けて・任せて・見守る学習支援のバランスのよい授業」「ひとりをみんなで、やさしく・なかよく・あたたかい学級経営」なども見られる。校長の方針を簡潔に表現しキャチフレーズにして伝えよう。

子どもとのふれあい―名前を覚えて呼んでみよう

校長はいわば全校・全学級の子どもの担任でもある。可能な限り子どもの名前を覚えて、一人ひとりの名前を呼んでみよう。校長先生が名前を知っているのはうれしい。

学校で子どもの名前を一番覚えているのは、養護教諭であろう。健康診断や保健室への来室などで子どもの名前もいち早く覚える。養護教諭と張り合ってみよう。

さて、子どものほうは校長先生をどう見てどう関わってくるだろうか。親しみをもってくるか、よそよそしいか。語りかけてくるか、笑顔を見せるか。ここまでの新しい校長の言動からなんらかのイメージをつくっている。遠足などで生活をともにするときに交流し話をしてみよう。思いがけず、保護者に関する悩みや友達関係の話が出たりする場合もある。そんなときは説教しないで、そっと話を聞くようにし、「お話できてうれしかったよ」と返しておこう。内容は担任にそっと伝えて、対応を一緒に考えればよい。

人材育成―聞く耳、長い目、日常会話から

教師の仕事は、よくいわれるように「授業で勝負」「授業が命」であろう。学校の教員一人ひとりがどのような授業・指導をするのか、そろそろ見えてこよう。また、個々の校務分掌とその具体的な職務の姿、職務行動も分かってくる。

「いいな」と思うところがあれば、「おや」「あれ」と気になるところもある。よくも悪くも気になるところは遠慮なく声をかけ、指導や行動・行為の意図や考えを聞いてみよう。校長としての自分がどう受け止めたかの反応も返してみよう。小さなことでの日常的なたわいない会話が大切である。この日常があれば、重い話題の場合も切り出しやすくなる。日常的な関わりを大切に。

チーム学校といわれるように、学校にはさまざまな立場や職務の教職員、時間や臨時の職員などがいる。これら全ての人々によって学校の教育活動が円滑に進められるのであり、これらの人々とも日ごろから交流する営みが大切である。それが生きるときが必ずある。

人材育成が早急の課題であり、校長の重要な職務であるが、これも焦らないことである。人を育てるとは、本人の内に育とうとする気持ちが必要なこと、また、育てるには時間がかかることを肝に命じ、育成計画を立てて、長い目でじっくりと取り組むようにする。校長がそうした目で見てくれていると感じさせるのが、人材育成の原点であろう。

よきチームづくりは校長の一褒め・感謝から

個々の教職員の資質・能力、授業力、指導力、職務遂行能力等々が分かってくるのと同じように、学校力、学校のチーム力も見えてこよう。

職員室の雰囲気は明るく和やかか、ギスギスしていないか。時間に厳しく素早く行動するか、ずるずるといたりおしゃべりしたりして教室に行かないか。行事や集会の目的・目標を共通理解し協力して指導に当たるか、担当者任せて立っているだけか。問題発生に協力して素早く対応するか、見て見ぬふりをしているか。

これらもよいところをしっかりと見て、それを認め、褒めるようにするのが肝心だ。校長が望むチーム学校の姿が、よさを認め、褒め、感謝することでイメージできるようにする。できない人、関わらない人、分かっていない人などとは、個別にじっくり話し合うようにする。

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以上、そうこうしているうちにすぐ7月、そして夏休み。そこでの教育計画、指導計画、諸予定、などの見通しが立っているか、見えているか、確認しておこう。