【連載】教育現場の課題をひもとく 問題行動の現状と課題・不登校編④ 問題に関する新たな動き

神田外語大学教授 嶋﨑政男

 

1.「心理主義」偏重から多角的取り組みへ

心理士の国家資格化やスクールカウンセラー制度の充実など「心理主義化」が進む中で、「心のビジネス化」等の批判の声が高まっている。文科省の通知(平成15年)でも、「不登校を『心の問題』としてのみとらえるのではなく、『進路の問題』として」とらえるよう求めている。

また虐待・経済的困窮等の家庭の問題や学校でのいじめ等を原因とする不登校が増えている実態から、福祉的・司法的対応の必要性・有効性が強調されている。

さらに、「不登校は学校教育の気の毒な犠牲者」という観点だけからの施策が功を奏していないとの指摘も増えた。不登校対策では、不登校児童生徒が「どのような支援を必要としているか」の多角的な検討が重要である。

2.「チーム学校」での取り組み

不登校の要因・背景は多様であり、教育問題としてのみ対応するのは困難である。しかし、その解決を目指すための学校の役割は大きく、責任は重い。学校はその自覚の下、家庭、地域、関係機関等と連携・協働して、多様な不登校への対応に努めなければならない。

このため、これまでも関係機関との連携の重要性は、「少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議報告」(12年)における「行動連携」のシステムづくりや、「青少年育成施策大綱」(15年)でのサポートチーム形成等が提唱されてきた。

教員を中心に、多様な専門性を持つスタッフを学校に配置し、学校の教育力・組織力を向上させようとする「チーム学校」構想は、この延長線上にある。チーム学校による不登校への取り組みには、大きな期待がかけられる。「チーム学校」の成否は、校長のマネジメント力と教育相談担当教諭のコーディネーター力がカギを握る。

3.「多様な教育機会確保法(仮称)」の動向

26年8月、文科省は、フリースクールを正式な教育機関と位置付けるための検討を始める決定をした。前月の教育再生実行会議での、フリースクールへの公費支援の検討提言を受けての動きであった。

フリースクールを正式な義務教育機関と位置付け、財政支援を行う法案(通称「フリースクール法案」)がまとまったのは、27年5月。法案の中身が明らかになると「学校教育の意義は」「義務教育の破壊につながらないか」等の慎重論が相次いだ。

同年9月、超党派による議員立法としての国会提案は断念され、今年3月に「義務教育段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(座長案)」が発表された。

名称は変わったが、フリースクール法案の基本的認識は踏襲されており、法案の中核を占める第三章「不登校児童生徒に対する教育機会の確保等」には、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」(第十三条)という一文がある。不登校児童生徒の一面を表現してはいるが、「多様な要因・背景」との整合性には疑問が残る。今後の成り行きを注視していきたい。

4.「児童生徒理解・教育支援シート」

個別支援シートは、特別支援教育においてその有効性が明らかになっているが、これを不登校対応に活用しようと、不登校に関する調査研究協力者会議で議論が重ねられ、今年3月に「児童生徒理解・教育支援シートの作成と活用について(案)」がまとめられた。次年度からの実施を目指し、文科省から通知が出される予定である。

このシートは、担任等を中心に学校が組織的に作成、校種や年度を超えて引き継がれる。不登校児童生徒の個々の状況を適切に把握し、関係機関で情報共有することが容易になるなどメリットが多い。組織的・計画的な支援を進めるためメソッドとして期待したい。