【連載】クオリティ・スクールを目指す 第79回 直島メソッドが学校を再開

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

「子どもたちが学校に戻ってきて、私もたこ焼き屋をまた始めました」と、店のおばさんが旅行者に語っていた。テレビでの、瀬戸内海の男木島での話である。人口約180人である。

平成23年春から休校だった学校が、昨秋から4世帯が移住してきて再開された。その背景には直島メソッドが大きくかかわっている。

周知のように直島といえば、安藤忠雄建築のベネッセハウスや地中美術館を思い出すであろう。今や高級ホテルリゾートとして欧米など国際的に有名になったが、初めは従業員の研修所や子どもたちのキャンプ地からのスタートであった。27年前である。

その後、ベネッセハウスという美術館とホテルの複合施設や草間彌生の南瓜などの屋外作品の展示、古民家の修復などの家プロジェクトを展開し、直島文化村が出現する。今では、直島の至るところにユニークな美術品があふれている。

私がハウスに宿泊したのは10年ほど前であるが、当時は新しいホテルの建築が始まったばかりであった。しかし、その後の展開がすごい。ベネッセアートサイト直島として、瀬戸内海に浮かぶ近接の島々がアートを展開するようになる。豊島、犬島、男木島、女木島である。これらの島で瀬戸内国際芸術祭が毎年開催されることになった。小豆島にもつながっている。

その結果、観光客が急激に増加するのである。島民は減少傾向にあったが、観光客が増えることで新たな商売が生まれるようになった。何よりも島のお年寄りが元気になり、案内役を務めていて、旅行者との交流も多くなったという。新たな地域のよみがえりである。

その基本は「芸術・文化」を据え、住民が受容し参加する地域おこしを実現したことである。地域創生である。その方略は最初から予測されていたわけではないが、人々のアイデアが交響して今日に至ったのである。今後もますます豊かになることは必定である。

「継続」が大事とベネッセの福武聰一郎最高顧問が東大福武ホールでの講演で語っていた。その意味で、この事業を「直島メソッド」と呼んでいる。そのことは極めて重要である。つまり、メソッドであるので、他の地域でも多様な形で実現できるのを示唆しているからである。

それは地域規模の大小を意味しない。また地域づくりの基本を「芸術・文化」とすることも意味しない。ただ、「直島メソッド」は多島海という地域の特質が背景にあったといえる。地域の特質を生かした創造的な視点が必要に思える。

今や、各地で地域おこしが活発化しているが、創造の多様性に出合えることで、そこにつながる一人ひとりの生き方が豊かになるのである。

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