【連載】目指せ管理職 選考試験を突破しようⅢ 特別編① 校長編「任せられる」と思わせる

教育新聞 教育管理職研究会編

 

管理職としての資質・能力、適性をみるのに、論文は他の試験方法より有効で優れています。論文が重視される理由です。採点官は、課題のとらえ方、対応のあり方などに関する論述から、考え方や実践の様態、指導力、人間性などを推測します。合格できる論文術のポイントをつかみましょう。(実際の手書き論文をもとに例示)

設問

教育効果を高めるために、学校がチームとしての力を発揮することが求められています。このことについて、あなたは校長として具体的に、何に、どのように取り組むか述べなさい。

論文例
教育は人なり。学校は、これまで教員の多能化と組織力で多くの課題を乗り越えてきた。しかし、その結果、TALIS調査において、世界で最も勤務時間の長い教員の国となった。本県教育委員会は、第2期教育振興基本計画でかかげた3つのプロジェクト中で、チームスピリットプロジェクトで、地域コミュニティーの重要さを明示している。現在、学校では児童生徒の能力や背景が多様化、複雑化し教員の力だけで対応することが難しい状況になっている。また、次期に向けた学習指導要領改訂が目指す授業改革のためには、教員が本来の業務と研修にいっそう専念できる体制づくりが必要と考える。

私は、校長として以下のようにして「チーム学校づくり」を行い、地域とともに歩む豊かな学校づくりに努力していく。

(1)課題の把握

教職員や学校内外の多様な人材の能力を発揮させチームとしての学校づくりを行うには、まず、学校や地域の現状を確認し、課題を把握することが大切であると考える。学校評価や評議員会議の記録、教職員や児童・保護者の生の声に耳を傾け、学校の実態を目と耳と足と心を働かせて早期に把握し、必要な連携とその優先順位を明らかにしていく。

(2)専門性に基づくチーム体制の構築

教育活動全体を、(1)教員の業務(2)教員と専門スタッフで行う業務(3)教員以外の職員と専門スタッフで行う業務(4)学校支援地域ボランティアが行う業務――に分け、役割を明確にしていく。その上で、教職員側と専門チーム側の双方にコーディネーターを作り連携を図るようにする。特に、専門スタッフとしては具体的に以下のような人材の確保に努めていく。

(1)については、教職員定数の確実な配当を受けるようにする。(2)の業務では、スクールカウンセラー、部活動指導員、スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員、看護士、言語聴覚士、など。(3)学校図書館支援員、ICT活動支援員、学校事務支援員。(4)学校支援地域ボランティア(環境整備・補習支援、プール監視等)、弁護士、警察OB、など。

(3)教員一人ひとりが力を発揮できる学習環境づくりの整備

多忙化する教職員の業務改善の上でも、チーム学校の体制づくりは重要である。専門スタッフや地域ボランティアの方々に力を発揮してもらいながら、教職員との役割分担を明確化し、教職員の物理的、精神的な負担の軽減化を図る。それによって教職員が子どもたちと向き合い、授業を豊かに構築できるようにしていく。

私は、校長として地域や専門スタッフの協力を得て、学校と地域がつながり、支え合えるコミュニティーと学びのセーフティネットが構築されたチーム学校を目指して尽力していく。

アドバイス

▽全体として

・文字の大きさや丁寧な書き方はよいと思います。しかし、句読点の付け方が不明瞭で読みづらいので気を付けましょう。

・まとまった論文に見えますが、序論が長く、結論を書くスペースを圧迫してしまいました。「序論」「本論」「結論」のバランスにも気を配り、紙幅の割り振りをもっと工夫しましょう。

・内容は、中教審答申で示されたことに照らしながら取り組みを論じています。よく勉強しています。着眼としては悪くありません。しかし、その結果、あなたらしい具体的な取り組みが見えてきません。評価者に強く響く論文にしたいものです。「経営のトップとして、児童生徒に…を培いたい。そのために、…のようなチーム力の発揮が必要で、そのために…に取り組む」との記述の仕方もあります。大事なのは、あなたの考えが、どのように学校経営に反映されるかの記述内容となれば説得力のある論文となります。検討してみてください。

・文章の終わりに、「努力していく」「尽力していく」との表現がありますが、校長には校内での事柄全てが適切に実施されるよう努力する義務があります。ものごとを達成する責務を負っているのを頭に入れて記述する必要があり、それが大事です。 

▽序論について

・設問に対する受け止め方が本論の内容に直結します。「多忙化」「教員の力だけでは難しい状況」「本来の業務に専念できる体制」との文言が続きますが、そのために「学校のチーム力」が求められているのでしょうか。そうであれば、校務の効率などが本論で論じられることになります。「設問の趣旨は教育効果を高めるため」にチーム力をどう高めるかを問うています。チーム力の積極的な意味を取り上げています。「一人ひとりの教員の力の発揮だけでは十分な教育効果は期待できない」「学校がチームとしての力が発揮されてこそ教育効果は期待できると考える」など自身の受け止めをしっかりしたい。

・いきなり「教育は人なり」という書き出しですが、唐突すぎて脈絡がありません。もしそのことが言いたいのならば、文章のなかで「教育は人なりと言われるように」などの表現として用いたらよいでしょう。

・「教員の多能化と組織力」の用い方は誤り。「教員の多才な能力や組織力」ではないでしょうか。「…学校づくりに努力していく」は「…学校をつくる。…学校づくりに取り組む」の方がよいでしょう。

▽本論について

・具体的な取り組みを、「課題の把握」「チーム体制の構築」「学習環境の整備」の3つで示し、柱は明確です。

〈柱1について〉

初めの2行で現状把握の意味について記述されていますが、校長として、把握の視点と方法から述べたい。把握に際しては、「チームとして活用できる資源の把握、校内が持つ強みは何か、学校外の持つ強みは何か」「どんなチームが必要か」「チーム力発揮に何が必要か」等が考えられます。把握の方法では、考えを聞く、調査する、直接出向くなど具体的に述べたい。

〈柱2について〉

・内容が網羅的な印象を与えます。校長としての具体的な取り組みはいくらでも出てきます。必要な体制を絞り込んで、どんな点に留意して、どんな手順・方法で体制を構築するかを端的に述べるとよいでしょう。校長として、一番悩み、工夫しなければならないところです。児童生徒の成長のために、学校内あるいは学校外を含めたどんなチーム力(学校の持つ総合的な力)を活用すべきかを想定することです。あなたのチーム学校のイメージを明確にし、特徴ある取り組みを論じたいものです。その点で、業務内容と人との記述は、例示的に1・2に抑えて取り組みを強調したい。その方が、あなたの考え方や取り組み姿勢が評価者に伝わると思います。

〈柱3について〉

・「教員…学習環境づくりの整備」ではなく、「…職場環境づくり」ではないでしょうか。

・教職員の多忙化や負担軽減も大きな課題です。他方、充実した教育活動の推進に一人ひとりの力が発揮できる校内の仕組みやルールづくりなども課題です。一人の教職員の良い考えが生かせる工夫や教育実践に対する指導・助言やフォロー体制をつくるのに何をするのか、重点的に述べましょう。校長の「常に児童生徒を中心に物事を考える学校」との揺るぎない姿勢や厳しい直接指導などにも言及するとよいでしょう。

▽結論について

・結論では全体を受け、さらに校長として、どうしていきたいのかという決意と熱意、そして指導力をどう発揮するかを示すべきです。読み手に「この人なら任せられる」というインパクトのある記述にしたいところです。その意味ではコンパクトにまとめられているとは思いますが、序論が長かったせいで結論として独立させられなかったところは、体裁として後味が悪くなります。

・チーム学校を働かせるためには、校長の組織マネジメント力の有無が基本的に必要となります。結論にあたって、これら自分自身の課題の克服への決意などが述べられていると、熱意が伝わると思います。

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