【連載】目指せ管理職 選考試験を突破しようⅢ 特別編② 教頭編 教頭としての決意を

教育新聞 教育管理職研究会編

 

管理職としての資質・能力、適性をみるのに、論文は他の試験方法より有効で優れています。論文が重視される理由です。採点官は、課題のとらえ方、対応のあり方などに関する論述から、考え方や実践の様態、指導力、人間性などを推測します。合格できる論文術のポイントをつかみましょう。(実際の手書き論文をもとに例示)

設問

児童生徒の教育環境として最も大切なのは、教職員が心身ともに健康であることです。このことから、教職員のメンタルヘルスの取り組みが重要です。あなたは教頭として、これにどう取り組むのか、具体的に述べなさい。

論文例
文科省が実施した教職員の病気の休職の中で、精神疾患による休職者は休職者全体の60%を超え、深刻な状況になっている。そのような中、文科省は27年7月に「学校における労働安全衛生管理体制の整備のために」を出し改善の方策を打ち出した。私はこれらを受け、教頭として、職員のメンタルをはじめとする健康を管理するため、以下のように取り組む。

(1)衛生推進者をリーダーとして毎学期衛生委員会を開いて、組織的に教職員のメンタルヘルスを中心とした衛生管理に努める。

(1)学年主任、主幹教諭等と連携して、教職員の出退勤時刻に目を向け、月100時間を超え、疲労が蓄積している職員がいないか確認をする。(2)ストレスチェックを行って、高ストレスが認められた職員には、申し出があれば医師による面接指導を実施する。  

(2)予防の取り組みを行い、教職員の意識改革を図る。
 
(1)教職員のストレスコントロール能力を高める研修を行う。特に、ストレスチェックを通して、自らの課題を見つけさせ、克服の取り組みに目を向けさせていく。(2)風通しのよい、笑顔と声かけのある明るい職場づくりを行う。教頭として、職員の先頭に立って挨拶や声かけを職員に行い、何でも相談し合える空気をつくっていく。(3)校務の効率化を図り、自由時間を楽しめる勤務体制を作るようにする。(4)教職員一人ひとりを見守り理解しながら、育成する意識をもって接する。特に、初任者や転任者、一人職をする職員の仕事ぶりには目を向け、良いところを把握、評価して、必要に応じ適切な支援を行う。(5)特定の職員に分掌が集中しないように質や量のバランスに注意して、校務を実施していく。

(3)早期発見に努め、適切な対応を行う。

(1)教頭や養護教諭が窓口になって相談体制を整える。相談を共感的に受け止めて聞き、助言に努める。困難を感じた場合は、校長の許可を得て、本人の了解を受け、校医等(専門家)に相談する。(2)変容サインを見逃さない(ミスや表情の暗さ、遅刻や早退、気力の減退・頻繁な異動希望、身だしなみの乱れ等)。

メンタルヘルスに関しては、さまざまな要因があるが、管理職である教頭自らが、明るく、笑顔で職務に励み、職員に声かけをしていくことを大切に、健康的な職場づくりに邁進していく。

アドバイス

▽全体として

・文字の大きさ、句読点の付け方、文字の丁寧さなど、読みやすく記述されています。

・「序論」「本論」「結論」のバランスに気を配り、紙幅の割り振りを工夫しましょう。

・内容は、あれもこれもと多く触れたいために網羅的となり、評価者(読み手)の心に響く、インパクトのある論文にならなかったのは残念です。箇条書きで記述するのではなく、取り組みの重点に絞って記述した方がより印象深い論文になると思います。

▽序論について

・教育の動向(文科省の調査や通達の内容)に触れ、そのことを基に教頭として取り組んでいきたいという出題の捉えはよい。ただ、あなたはこの現状をどう受け止めるのか、「これは学校現場にとって深刻な改善すべき課題であり、職場の誰もが心の問題や悩みを抱えている」などが序論できちっと触れられるとよいと思います。

・「教頭として、職員のメンタルをはじめとする健康の管理」と、この設問を教職員の心身の健康管理にまで掘り下げた記述は、あなたの考えの深さが感じられてよいと思います。

▽本論について

・取り組みをあまり多くせずに、「組織的な管理」「教職員の意識改革」「早期発見と適切な対応」という3つに絞ったのはよいと思います。

・教頭として大切なのは、職場の人間関係づくりと職場環境の改善を図ることです。そのことに対しての教頭としての具体的な取り組み、対応という内容を盛り込むことで教頭としてどうすべきかが伝わってくると思います。

〈柱1について〉

組織的なメンタルヘルスと精神衛生管理への取り組みについて、具体的に述べたいものです。現在に比べ、組織的・機動的にするには、どのような組織をどんな構成と構成員とするか、そのために教頭として、どんな手を打つかなどが記述されるとよいでしょう。例えば、校長の指導の下に、「○○○を構成員とした衛生委員会をつくる」「委員会は職員の健康に関する状況把握、対応法の検討・実施などを行う」「教頭はこの組織運営と取り組みの実際をマネジメントする」などを念頭に置いて、教頭としての取り組みを述べましょう。教頭の悩みの多くに、「組織はあるが機能していない」などがあります。こうした点も念頭に置いた上で述べることも必要です。

〈柱2について〉

・教職員の意識改革は、「個々の教職員が自ら意図的に自己の課題を持ち、克服の取り組みを行う」との記述は、あなたの考えが明確に述べられてよいと思います。そのために、教頭としてどうするかを具体的かついくつかに絞って記述するとよいでしょう。初任者、転任者、一人職への配慮については、教頭としての温かく、きめ細かな指導の姿が伝わります。

・5点にわたっての記述内容は、(2)と(4)、(3)と(5)を整理してまとめることができそうです。検討してください。

〈柱3について〉

・コンパクトに2つにまとめ、内容も分かりやすく記述されています。

・早期発見には、記述された「見逃さない」ことが非常に大事です。それには、教頭や教職員のお互いが、気づかい合い、感じたことや気になったことを気軽に言えることでしょう。また、管理職に情報が迅速に入る職場をつくることです。

・適切な対応には、まず、管理職の注意深い、観察・気配りの姿勢が求められます。その上で教頭として、気になった場合は一人で判断せずに、校長や衛生委員会等での指導や話し合いを参考にしながら、的確に本人に対応することでしょう。

▽結論について

・結論では全体を受け、あなたらしく教頭として、どうしていきたいのかという決意と熱意が伝わらなければなりません。その意味では、本文が長かったせいで2行しか取れなかったことで、あなたの教頭としての適格さを伝えきれない物足りなさと、紙幅全体のバランスの悪さが感じられます。

・教頭という立場での取り組みですから、校長と「報・連・相」を綿密にしとか、校長の指示のもと迅速で的確な対応ができるように、尽力していきたいなどの姿勢が記述されると、さらによいでしょう。

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