【連載】校長のパフォーマンス 第63回 エッセンシャル思考を学ぶ

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

人は誰もが当面する仕事を多く抱えている。そうした仕事をこなしながら、今の仕事に満足せず、もっとよい仕事、やりたい仕事ができないか、と考えることがあるであろう。
特に教師の仕事は極めて多様で、際限がないように思える。地道な仕事の繰り返しである。だから、確かな仕事の手応えを求めたくなる。

しかし、どのように向上心を持っていても、大量の仕事を抱え込んで容易に道は開けない。そこで何か、向上心を支えるアドバイスが欲しいと考える。
そのアドバイスとして、グレッグ・マキューンの『エッセンシャル思考』(かんき出版、2014年)が極めて参考になる。エッセンシャル思考は、仕事をたくさん行うことではなく、仕事のやり方を変えることで「よい仕事」を確実に行うためにあるという。

人は「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」という思考の罠にはまり込んでいるが、それから抜け出す必要があるという。
基本は3つである。(1)「やらなくては」ではなく「やると決める」(2)「どれも大事」ではなく「大事なことはめったにない」(3)「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」――である。

ただし、それは簡単なことではない。慣れ親しんだやり方が、つねに引きずり戻そうとするからである。
いや、もっと重要なことがある。エッセンシャル(本質)を見抜く確かな識見を持てるかどうかである。どうすれば多数の些末な事柄から少数の重要なことを見極めることが可能か。

さらに、本質を見極めるだけでなく、実際の仕事に生かす「捨てる技術」や「しくみ化の技術」も具体的に身につけるにはどうすべきか。「より少なく、しかしより良く」が可能になれば仕事の満足感が大きく変わることは確かだが。

興味深いのは、本書は自分で優先順位を決めるという「選択力」を磨くことを強調していることである。確かに、与えられた仕事をただこなすだけであれば、「やらされる」感覚のみが残る。自分で優先順位を決められることは、創意や自己判断を生かすことであり、責任を伴うが、結果の満足感も高くなる。「やりがい」感が強く生まれるのである。

恐らくは、エッセンシャル思考への道は読者によって多様であると考えるが、本書によって仕事の見方を変えることで優先順位を見いだすことができ、効果的・効率的な職務遂行ができれば、仕事のやり方自体が変わり、力量アップにつながることは確かである。
今後、教職の仕事は複雑化し、困難度を増すことは必須であろう。持続可能な職務遂行能力を身につけるためにも、時に立ち止まって仕事の「本質」に向き合ってみることが必要ではないか。