【連載】教師のための人間関係づくり 第14回 荒れないクラスづくりの心理学

明治大学文学部教授 教師を支える会代表 諸富祥彦

 

○リーダーシップとカウンセリングマインド

学級づくりに悩む若い先生方が少なくありません。
経験が少ないので、若い教師は、その分を理論や技法の学習によって補っていくしかありません。担任教師が「荒れないクラスづくり」のために必要とする資質とは何でしょうか。

1つはリーダーシップ、もう1つはカウンセリングマインドです。
リーダーシップとは、生徒をぐいぐい引っ張っていく力。「先生は、こんなクラスをつくりたい」と目標を明示して、学級集団で目標を共有するのです。集団そのものに一体感が生まれ「この先生についていきたい」という気持ちが生まれてきます。

学級にルールを育むことも安心できる学級づくりには必要です。「1人の子どもが発表している時は、他の子は黙って聞くこと」というルールが守られていてはじめて、子どもは安心して自分の意見を言えるのです。

しかし、こうした面ばかりだと、クラスの雰囲気は堅くなってしまいます。これを防ぐには「この先生といると気持ちが落ちつく」といった雰囲気、すなわちカウンセリングマインドが不可欠です。

ルール一辺倒の教師は子どもを押さえ込み、ストレスをため込ませ、キレる子どもを生んでしまいます。逆に、カウンセリングマインドだけの教師のクラスは、何かビシッとしたけじめに欠けます。
つまり、リーダーシップとカウンセリングマインドは、荒れない学級づくりの両輪なのです。

○個が生きるつながりのあるクラス

私は、いいクラスとは「秩序が保たれているからこそ、安心感があって、だから個々の子どもたちが安心して発言できるクラス」のことだと思っています。

私の言葉でいうと、「個が生きるつながり」のあるクラス。
「個が押し殺されて秩序だけがあるクラス」でもなく、「個は生き生きしているがバラバラでまとまりのないクラス」でもなく、「個が生きることができるようなつながり」、その「つながりゆえに個が生きる」。そんなクラスを私は理想だと考えているのです。

そして、そのために学級担任には、集団の目標を明示し、ぐいぐい引っ張っていく「リーダーシップ」と、個々の子どもをケアし、受け止めていく「カウンセリング・マインド」の2つが必要になるのです。

逆に言えば、2つの資質のうちのどちらかが欠ければクラスは荒れやすい、ということです。
このことを端的に示すのが、学級のアセスメントツールQ―Uです。このプロットが縦長になるクラスは、担任が強い、管理的な指導をとる傾向があるといわれます。

大声で怒鳴って威嚇する。子どもの意見は聞かずに一方的に叱責し続ける。そんな教師のクラスは、今は静かでルールが守られているかもしれません。しかし、個々の子どもは相当ストレスを溜めていますので、ちょっとしたきっかけで爆発します。教師に反抗する「反抗型の荒れ」が生じやすいのです。担任の前では静かでも、音楽や美術など専科の教員の授業から荒れ始める場合も少なくありません。

一方、Q―Uのプロットが横長になるクラスは、教師の示したルールが守られない傾向が強いといわれます。
やさしさはあっても集団をまとめる力のない教師のクラスでは、子どもたちが教師の気を引こうとしたり、教師をごまかそうとしたり、注文をつけようとしたりする。そんなふうにして、教師を振り回す子どもが多く、秩序は乱れます。その結果、子ども同士のいさかいやいじめが多くなるのです。
これはいわば「なれあい型の荒れ」です。

前者は「個が押し殺されて秩序だけがあるクラス」であり、後者は「個は生き生きしているがバラバラでまとまりのないクラス」です。
そこに欠けているのは「個が生きるつながり」。秩序が守られているがゆえに、一人ひとりが荒れないクラスづくりの鉄則です。

若い教師はとかく「子どもになめられてはいけない」と考え、必要以上に厳しくしてしまう傾向があります。そうしたクラスは、子どもたちの反感と抵抗がピークを越えると非常に脆いことを知っておく必要があります。