函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道
■特徴
教育カウンセリングの特徴を一言でいえぱ、グループ志向が強く、能動的で、病理現象より発達課題に重点を置く。
「思考・感情・行動の変容」が大切。教育カウンセリングにオールマイティーな理論はない。どの理論にも限界がある。使えるものは何でも使う折衷主義に立つ。「人を見て法を説け」である。
■方法
教育カウンセリングの方法や場を列記すれば――。
(1)構成的グループエンカウンター(2)サイコエジュケーション(心の教育)(3)対話のある授業(4)特別活動(5)キャリア教育(6)発達課題への対応(7)グループワーク(8)マネジメント(学年・学級経営)(9)チーム支援(10)個別面接(11)対人関係ゲーム(12)ピア・サポート(13)アサーショントレーニング(14)ソーシャルスキルトレーニング(15)チーム支援
■従事者に不可欠な条件
教育カウンセラーに欠かせない条件を、クラーク・E・ムスターカスに見る。
ムスターカスは、アメリカの実存主義的心理療法家で、ヒューマニスティック心理学の系譜を継ぐ。人間の健康な側面に焦点を当て、精神疾患を論ずるのではなく、人格成長のために不可欠な条件を明らかにした。
その条件は次の3つで、教育カウンセラーにも、不可欠な条件として当てはまる。
(1)ワンネス(One―ness)=その人の内面世界を共有する姿勢。気持ちを理解し、人のいやしを志向。感情体験の幅の差を尊重し、受容する。
(2)ウイネス(We―ness)=私たち意識・身内感情・互いが味方。人の役に立とうとする姿勢。児童生徒を愛でる。無視しない。褒める。多様な文化・価値に触れる。
(3)アイネス(I―ness)=自分が自分であることを開示する姿勢。自己開示のない教師は、児童生徒から頼られず、尊敬もされない。
■理論的な背景
教育カウンセリングの理論的な背景となるのは――。
(1)カウンセリング心理学(2)キャリア心理学(3)発達心理学(4)ソーシャルワーク(5)教育学(学習指導・生徒指導・教育哲学・教育社会学・健康教育)(6)学校心理学(7)社会心理学(8)グループ・組織心理学
■実践上で不可欠な要素
(1)技能=関わる、読み取る、伝える。(2)知識=実践的な理論と解釈(3)人間観=全体を貫く教育カウンセラーとしての基本的な態度。
この三者の三位一体である。
■6つの実践
教育カウンセリングは、学校生活の日常、学級や授業、進路相談、三者面談などの中で取り組む教育的な営みとして大きな意義がある。次の6つの技法が有用である。
(1)構成的グループ・エンカウンター(2)アサーション・トレーニング(3)ソーシャルスキル・トレーニング(4)対話のある授業(5)サイコエジュケーション(6)キャリア教育
これらの技法の概要と授業での実際の展開例などを、次稿以降に、順次、示していく。