【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南⑤

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

8月
先を見通し、足元を固める
8月後半がスタートととらえる
次期教育課程への見通しを立てる

8月の中・後半をどう過ごすか、生かすか。新任校長にとっては大事なところである。

特に、来年当初に予定されている中央教育審議会の答申、これに基づく新学習指導要領の告示等に基づいて新教育課程の編成の取り組みをどのように展開するか、数年間の見通しを立てることが必要である。各学校がこの間に、何にどのように取り組むかを具体的に計画化できるかが問われるということである。

なぜなら、次期学習指導要領は内容の削減はしない方向であるが、資質・能力の育成を重視して教育方法の転換を求めている。その視点が「アクティブ・ラーニング」であり、「カリキュラム・マネジメント」である。

また、教育課程の新たな理念として、「社会に開かれた教育課程」を標榜し、特に教科横断的な内容構成等が重視されている。これらを教員一人ひとりがこなせられるよう資質・能力を高めることが求められ、この数年間に着実に取り組むことが必要なのである。

教育課程改訂期は、見方を変えれば学校を創り変える、ほぼ10年に1回の最大のチャンスでもあり、それだけに校長の力量が試される時でもある。十分な準備なくしては成しえないことを肝に命じて取り組む必要がある。

その見通しを立てるのが、この8月中・後半である。

移行期間の見通しを共有し取り組む

次期教育課程全面実施は、小学校で平成32年、中学校は33年に予定されている。今年度後半、そして29年度から全面実施までどのように準備していくか。しかも移行を取り入れ、現行の教育課程を実施しながらの次の準備であり、教員の負担は大きくなる。だからこそ、見通しをもち意図的、計画的、組織的、継続的、発展的に取り組む必要がある。

以下は小学校の取り組みの一例である。

▽平成28年度=社会に開かれた教育課程、アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメントの研修。中央教育審議会の中間まとめや報告の学習。向こう3年間の計画作成(中学校は4年間)。これまでの学校評価から学校改革案の作成。

▽平成29年度=中央教育審議会答申の学習。新学習指導要領の学習。学校の教育目標の見直し(社会に開かれた教育課程を視点にして)。移行措置計画の作成。学習指導要領の総則や各教科等の解説書の購入と学習。特別の教科道徳の教科書採択、指導計画の作成。今後の学校改革の中長期ビジョンの策定と提示。

▽平成30年度=移行措置1年目の実施。新教育課程編成案の作成(一次)。アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメントの実践と教員の力量向上。新教育課程に応じる教育環境の整備、教材の整備等。特別の教科・道徳の全面実施。

▽平成31年度=移行措置2年目の実施。新教育課程編成案の作成(二次)。年間・単元の指導計画案の作成、アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメントの実践と教員の力量向上。新教科書の研究及び採択後の指導計画への位置づけ。

主なものを例示したが、この他にも新たに始まる高学年の英語、中学年の外国語活動の準備、プログラミング教育の準備、さらに日課表や時間割の設定等々がある。3年間の計画をしっかりと立て、今後の見通しをもって着実に取り組めるようリードしていこう。

足元固めのスタートは8月から

8月中・後半の大事なもう一つの仕事は、中・長期的な展望と計画を見据えながら足元を固めることである。この2学期、あるいは1学期後半から2学期前半の教育活動の質をどう高めていくかについて、方針や見通しを示し、学校がチーム学校として一つになって取り組むようにリードしていきたい。

スタートは子どもが登校する前からだ。9月1日が始業であれば、教育活動のスタートは8月後半からである。学校経営方針、教育課程の重点などにそって9月から12月までの見通しをもって準備をし、体制を整え、9月1日にはゆとりをもって子どもとかかわり、子どもを見守れるようにすることが大切である。

この4カ月どのように教育活動を進めるか、見通しをもって取り組めるよう、2学期の意義や各月のもつ意味を学校経営方針の一環として示すようにする。
以下は、その一例。

〔2学期〕
楽しい学校をめざして目標や課題の実現・解決に協力し互いのよさを学び合う
▽9月…2学期の目標を立て、学習や生活の見通しをもつ
▽10月…目標の実現をめざして互いによさを発揮し合う
▽11月…学習や生活の充実を目指して、互いのよさを学び合い高め合う
▽12月…2学期のまとめをし、成果と課題を3学期につなげる
これらに関する指導は、教育課程・指導計画に則り全教職員が一丸となって取り組むよう校内研修等で実践的に確認し、協働的に取り組むようリードしていく。

どこかで一休みを率先して

夏季休業の前半は、プール指導、補習、研修等々で校内はそれなりに賑わっていたことと思われる。また、学校評価・自己評価の形成的評価や学校関係者評価の中間評価などの結果から、9月以降に向けての改善策なども講じられていることであろう。さらに、地域での祭りやイベント、少年・少女のスポーツ大会、ラジオ体操等々も続いて結構忙しい日々でもある。

こうした合間をぬって教頭とよく打ち合わせをし、交代して休暇をとることも管理職の務めである。夏季休業中のリフレッシュを土日や祝日にからめてとれるように工夫しよう。もちろん、教員に休暇をとってリフレッシュすることを勧めよう。

先頭に立つ校長として自己研修

さて、新任校長としてこれからの変化の時代を乗り切るためには、常に新たな知を吸収し、自らを高めていくことが必要である。校長になったことは、終着点ではなく出発点である。末端としての校長ではなく時代の先端をいく校長でなくては、未来を拓く子どもたちの教育をリードすることはできない。学ばなくてはならないことはたくさんある。

以下に、この休み中にぜひ読んでおくことを薦める図書を紹介する。

▽『学びとは何か〈探究人になるために〉』(今井むつみ著、岩波新書)
▽『資質・能力 理論編』(国立教育政策研究所編、東洋館出版社)
▽『日本の学校を観る 子どもをあなどるなかれ』(児島邦宏著、教育出版)
▽『日本一小さな航空会社のお大きな奇跡の物語』(奥島透著、ダイヤモンド社)
▽『最高のリーダーは何もしない』(藤沢久美著、ダイヤモンド社)

この他にも昨年12月に出された中央教育審議会の「教員の資質・能力」「チーム学校」「学校と地域の連携協力等」に関する各答申、同審議会の各ワーキンググループが出した「まとめ」等にも目を通しておこう。本屋や図書館で情報や文化に直接触れてみることが大事だ。

関連記事