【連載】クオリティ・スクールを目指す 第85回 「学びの地図」をどう描くか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

次期学習指導要領に向けたこれまでの審議の「まとめ(案)」が、8月26日に、中教審教育課程部会で了承された。そこには、従来にはなかった画期的ともいえる内容がみられ、中教審の意気込みが感じられる。その端的な表現が「学びの地図」である。

「学校教育を通じて子供たちが身に付けるべき資質や能力や学ぶべき内容などの全体像を分かりやすく見渡せる『学びの地図』としての役割を果たせせるようにすることを目指す」の文言がみえる。

実は、私がこれまでの中教審の論議で感じてきたのは、むしろ将来に向けた教育のあり方についての「不安感」である。例えば、「論点整理」の当時、AI(人工頭脳)は話題にならなかった。最近の企業等にみられるAIに関するニュースの増大は近未来においてその影響がかなり急激になるのを予感させる。当然、教育の世界にも波及するのは確かであるが、その対応策はまったく見えていない。

背景には、将来の職業のあり方についての人々の不安感がある。野村総研がAIの進化によって消える職業、残る職業を例示していたが、単に職業の問題のみでなく、社会構造そのものが変わる動きではないか。

しかも、その時期は案外早いかもしれない。将来を考えれば、今年生まれる子どもは22世紀に生き残る存在である。私は「子どもは未来からの留学生」と考えるが、その留学生に未来を生きぬく力をどう身に付けるか、教育実現を図るのは極めて難題だと考える。未来は不可視的でありすぎる。つまり、未来は予測不可能であって「学びの迷路」に誰もが不安感を持ち、立ちすくんでいるように見える。

ただし、AIなどを過度に怖れていても解決策が生まれないのも確かである。AIなどの出現は予測を超えるにしても、職業が半減するほどの影響はあるだろうか。かつて情報機器など無数の労力節約型機器が発明されて、経済学者のケインズなどが技術の進歩は生産を高めるため、人々は長すぎる余暇時間をもてあますと予想したが、労働時間はほとんど縮小していない。むしろ女性が進出するように労働力は一層増加している。

予測的な世界は人々を裏切ることもありうる。ただ、AIの出現は従来型の技術の進歩と各段の差異がみられるかもしれない。

ともあれ、「学びの迷路」のごとく予測不可能に思える未来の教育のあり方について、迷路だからこそ確かな進路を構築する「地図づくり」が必要になるといえる。

その意味で、次期学習指導要領を「学びの地図」と意図するのは、単にわかりやすく表現するのみでなく、未来社会へつながる教育の姿を明確にすることで、大いに期待したい。

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