【連載】校長のパフォーマンス 第66回 「叱る」文化、「叱り」の復権

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

今、NHKの朝の番組である連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が好評であるが、そのモデルは『暮らしの手帖』の社長大橋鎭子である。むしろ、編集長の花森安治が有名であった。

その『暮らしの手帖』は周知のように生活の知恵として、例えば洗濯機やパン焼き器などを徹底して性能を調べ、製品を比較した結果を読者に提供していた。すごい発想で、少しでもよいものを求めたい生活者に大きな恩恵を与えただけでなく、企業の開発を促進した点で影響もまた大きかった。

その『暮らしの手帖』が珍しい特集をしている。しかも特別号で『保存版2.』とある。その特集は『叱る』(平成15年4月号)。なぜ、「叱る」が本紙のテーマになるのか。

あとがきの文言に、「創刊以来『暮らしの手帖』の基本を貫いてきた編集姿勢を簡潔明瞭に表現するなら、世の中に蔓延している『無責任』とか『不合理』を正面から見据えるとともに、箸の上げ下げまで親身かつ真剣に『叱る』ということだった。例えば名物企画『商品テスト』とは、商品製造者の責任を合理的という表現で判り易く『お叱り』する——手法だったのである」と書かれている。

ただし、この冊子の内容は親や教師、上司の「叱る」ことがテーマで、「叱る」ことと「怒る」ことの違いや「叱り方」についての多様なあり方について、曽野綾子ほか多くの著名人が執筆している。例えば「叱るということ」「叱り・叱られるコミュニケーション」「とにかく叱られた」「私を叱ってくれたあの人、あの一言」「箸の上げ下げをきっちり叱る」など多彩である。

「叱る」ことを多面的に考えさせてくれる冊子といえばそれまでだが、背景に『叱る文化』の衰退とそれをよみがえらせたいという『叱りの復権』への願いがある。

なぜ、両親や教師、上司が「叱る」ことがめっきり少なくなったのか。「叱る」ことが難しくなったのか。「叱る」ことの効用が役立たないと考えるようになったのか。確かに「叱る」文化の衰退は甚だしい。

半面、無遠慮で、自分勝手で、社会性やしつけが身についていない人間も多くなっている。職業上の接遇や役割を知らない若者に出会ってびっくりすることがある。

「叱りの復権」が必要であると考えるが、どうすれば可能か、難しい世の中になった。個々の自覚が基本であろうが社会的なしつけなどの生活規範の徹底が大切でもある。

『暮らしの手帖』の行った商品テストは今、消費者行動として多様に市販される商品を購買者が評価しネットで伝え、ネット販売事業者が点数化して広く購買者に知らせる方法などが広まっている。一方、人間の行動の規範は幼少からのしつけが基本である。『叱る』文化を改めて考え直したいと考える。