【連載】教育現場の課題をひもとく 特別編 キーワードで読む「次期学習指導要領・審議のまとめ」(5)

監修 教育新聞論説委員会

「生きて働く知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」

平成20・21年学習指導要領の特色は、学校教育法第30条2項で示された学力の3要素が、学習指導要領の総則に、「教育課程編成の一般方針」として示されたことにあった。今回の改訂に向けた特色は、教育課程の構造化やカリキュラム・マネジメントを掲げるとともに、学力の3要素を「三つの柱」として再構成し、教育課程全体に浸透・具体化する仕組みを設けた点である。

「三つの柱」は次のとおりである。

(1)「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」
(2)「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」
(3)「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

(1)と(2)は、これまでの学力の3要素と重なる内容であるが、全体を通じて「開かれた教育課程」の趣旨を受けて、児童生徒の生きる力の育成を目指すものとなっている。学校教育が目指す狭義の学力にとどまらず、これからの社会を生きていく児童生徒の視点に立って、より広く包括的に資質・能力が構想されている。

以下、「三つの柱」の教育指導上の意義や位置付けについて整理する。

第1に、前述したように「三つの柱」を、教育課程および学校教育全体が目指す資質・能力として位置付け、浸透・具体化する仕組みを設けたことである。「審議のまとめ」では「全ての教科等や諸課題に関する資質・能力に共通する要素」として位置付けられている。具体的には、各教科等で育む資質・能力だけでなく、教科等を超えた学習の基盤としての資質・能力(例えば言語能力や情報活用能力)、並びに現代的な諸課題に対応した資質・能力に共通する要素とされている。

このことは、各教科等の指導計画の作成、教科横断的な教育の全体計画の作成にも浸透・具体化していかなければならないのを意味している。例えば、言語能力、情報活用能力の育成、食育、キャリア教育等において、「三つの柱」を踏まえた目標設定と全体計画等の作成が必要である。

第2に、義務教育および初等中等教育全体を通じて目指す資質・能力の柱として設定されていることである。「第1」が当該学校段階で目指す資質・能力であったのに対して、学校段階間の接続を含む初等中等教育全体で目指す資質・能力との位置付けである。

具体的には、学習指導要領の総則において、「三つの柱」を踏まえて学校段階ごとの「教育の基本」が示される。各学校の教育課程の編成・実施に際しては、少なくとも隣接の学校段階の教育の基本を踏まえた取り組みが求められよう。

第3に、各学校の教育目標設定の指針になるとともに、カリキュラム・マネジメントを進める際の基軸としての役割である。カリキュラム・マネジメントを進める際には、まず「三つの柱」に基づき設定された学校教育目標について、教育課程編成・実施へと具体化するプロセスを点検する必要がある。また、児童生徒の学習評価を「三つの柱」にフィードバックする道筋を整理することも合わせて求められる。

今後の課題として、「三つの柱」は、学習指導要領において各教科等の目標や内容に具体化されるが、一方で各教科固有の「見方・考え方」が整理され、総則に付される予定である。後者は、各教科等における学びの視点と方法とされており、授業の中で「働かせる」ものとされている。実際の授業においては、「見方・考え方」を働かせながら「三つの柱」の習得を目指すことになるが、その具体的な姿はあまり明確でない。

今後、指導計画や授業構成といった実践的な場で検証しながら具体化していくことが望まれる。

(担当・工藤文三論説委員)

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