【連載】国際バカロレアを知るために 第31回 だれのためのIBか?

都留文科大学特任教授 武蔵野大学教育学部特任教授
リンデンホールスクール中高学部校長 大迫弘和

 

前回と前々回、私が「国際バカロレア(IB)に関する三大誤解」と名付けている中の「IBには莫大なお金がかかる」という誤解について書きました。今回は「IBはエリート教育」という誤解について書いてみます。

IBは1968年にジュネーブでDPが誕生したのがスタートです。60年代後半に母国を離れジュネーブの国際機関等に勤務していたご家庭のお子さんたちが恵まれた家庭環境にあり、DPを修了後、世界の名だたる大学に進学していったのは想像に難くないです。そこから「IBはエリート教育」というイメージが生まれていると思います。

しかし、IB教育とはどのような教育かと考えたとき、それは(1)Thinking Skill(思考スキル)(2)Social Skill(社会性スキル)(3)Communication Skill(コミュニケーションスキル)(4)Self-management Skill(自己管理スキル)(5)Research Skill(リサーチスキル)の5つのスキルを育むプログラムであります。

これらの5つのスキルを持った人の具体像として「IBの学習者像」における10の人物像(Inquirers 探究する人・Thinkers 考える人・Knowledgeable 知識のある人・Communicators コミュニケーションができる人・Principled 信念のある人・Caring 思いやりのある人・Balanced バランスのとれた人・Open-minded 心を開く人・Risk-takers 挑戦する人・Reflective 振り返りができる人)を目指す教育プログラムであり、これらのスキル、人物像は、エリートと呼ばれる限られた人だけに必要なものだと思えません。

これらは、これから21世紀を生きていくすべての子供たちの中で育まれるべきものだと思います。

そのことを国際バカレア機構も2007年前後から問題として意識し、13年にIBとしての4つ目になるプログラム、IBCP(IBキャリア関連教育プログラム)を誕生させたのは、その問題意識の表れと言ってよいでしょう。IBCPとは、高校を卒業した後、実社会に出ていく生徒たちのためのプログラムなのです。

IB、そもそも「DP」は学問的エリートのためのものではありません。IBは、プログラムでの学びを自分自身のために役立て、成功を収めることができる生徒全員のためにあると信じています。DPにおける成功とは、ディプロマ資格の「点数」によって示されるのではなく、各生徒の成長にもたらされた付加的な価値によって最も適切に測ることができるのです(「DP 原則から実践へ」から)と当初から明言しています。

「IBはエリート教育」という誤解が消えることを願います。

「エリート」という言葉は「神に選ばれた者」という意味のラテン語を語源にしています。そうであるなら、すべての子供たちが「エリート」なのです。

その意味において「IBはエリート教育」というなら、言い方は正しいといってもよいでしょう。

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