【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南⑦

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

10月
力量アップを図る 実りの秋は教師から
個に応じた人材育成をリードする

具体的な指導を展開しよう

年度の後半に入り、教育活動が円滑かつ効果的に展開され、学校には活気があふれ、子供たちは生き生きと学び、生活している。そんな姿の表出が期待されるときである。実りある学校を生み出すのは教師集団であり、それを育て生かし発揮できるようにするのが校長のリーダーシップである。一人ひとりの教師の力量は、この半年の中で向上しているだろうか。

通常、組織においては優秀、普通、課題ありの割合が2対6対2の割合になるといわれているが、現任校ではどうだろうか。教師一人ひとりの力量をしっかりと把握するために「人材ポートフォリオ」を作成してみよう。例えば、仕事力を縦軸、人間性を横軸にして十字チャートを作り、それぞれを高い低いによる4象限に位置づけると個々の教師と学校全体の教師の仕事力・人間性の状況が見え、個々に、全体にどう対応してレベルを上げていくかが見えてこよう。また、個々の教師のライフプランに応じた自己育成計画についての相談にのり、アドバイスすることも大切である。

これらを踏まえて、個々の教員の育成計画を力量アップに向けて見通しのあるものにし、具体的に育成指導を展開するようにする。

主体的・対話的で深い学びを実現する

子供たちが確かに育つためには日々の授業に教師が熱意をもって取り組むことが何よりも基盤である。その上で授業の質を高めることが求められる。一人ひとりの教員の授業力をしっかりと把握し、授業の何をどう改善するか当人と共通理解し、具体的な指導を行うようにする。

教育改革が進行し次期学習指導要領改訂の内容や道筋が見えている今日、子供たちの学びのあり方として「主体的・対話的で深い学び」が重視され、そのための授業改善の視点としてアクティブ・ラーニングが求められている。これらは、現行の教育課程においても基礎的・基本的な知識・技能を活用した問題解決的な学習や体験的な学習、探究的な学習、協同的な学習、言語活動の充実、学習の見通しと振り返りの指導等々が該当し、これらを確実に実践できる力量が問われている。その認識と自覚を個々の教師がもって日々の授業に取り組み、レベルアップするよう指導助言を行うようにする。また、校内研修と連動させ、研修成果を日々の実践に即生かすように指導を行う。

学級経営を重視し楽しいクラスづくりを進める

教師の力量アップには、授業とともに、学級経営の充実に向けた指導力向上が求められる。今日、若手の教師が増加している状況において特にこの点が重要である。また、次期教育課程においても、学校の意義が再認識され、その中での学級の重要性が捉え直されている。

学級には、子供が主体的・対話的に学んだり生活したりして、生活の質を深めていく場であることが求められる。学級が学びの場として、子供の生きる力の基盤となる資質・能力の3つの柱の育成の場となるよう学級経営が展開されることが求められる。

今一つは、こうした学級の実現に向ける過程でいじめや不登校の問題が速やかに解決され、明るく楽しい学級づくりが進展できるようにすることが求められる。一人ひとりの子供理解を深め、日々変化変容する子供を捉え情熱をもって子供と関わる学級経営を大切にする。

以上の視点に立って、どのような学級をどのようにつくり育んでいくかについて学級経営案を作成し、これに基づいて、意図的、計画的、組織的に学級の質を高めいくことができるように指導助言していく。これも校長の人材育成計画に基づき、学校を挙げて組織的に取り組んでいくようにリードする。

アクティブラーニングで研修する

秋は校内研修を充実させるときでもある。各学校では、次期教育課程を意識した校内研修を始めていよう。

まずは、新たに求められている「資質・能力」とは何か、なぜ今それが求められているのか、その背景は何かをしっかりと押さえ、踏まえるようにすることが大切である。その上で「主体的・対話的で深い学び」が重視され、それを実現するための授業改善の視点として「アクティブ・ラーニング」があること。「アクティブ・ラーニング」を実現するためには、教科横断的な視点、PDCAのサイクルの確立、人的・物的資源の活用等を重視する「カリキュラム・マネジメント」と連動させる必要があること。これらについて確実に理解できるようにし、これを踏まえてアクティブ・ラーニングの授業づくりの研修を充実する。

したがって、教師自らがアクティブに研修し、思考を深められるような思考ツールやワークショップ等々を取り入れた研修を工夫し、行うようにする。

教員の努力や創意工夫を広報する

子供たちの実りに向けて教師集団は、創意工夫し努力している。その成果は大なり小なり各学級の子供の姿に表われてくる。授業の工夫や学級経営の努力が実り始めるということである。校長はそれを見逃してはならない。
校内巡視や授業観察などの際に各学級での子供のよさをしっかり見取り・聞き取り・読み取ることである。そして、そのよさや成果を教師に伝えて労うようにする。

「今日の授業の発問がよかったね。子供の発言の質が変わったよ」「君のクラスのA君の作文は論理がはっきりし、主張が明確でわかりやすいね。下級生の参考になるよ」「体育の集団行動が一つにまとまっていて見事だね。子供たちのやる気が伝わってくるよ」などと評価を伝えよう。

また、こうした教師の努力や工夫の姿は、家庭や地域に向けて広報・宣伝しよう。家庭・地域の人々は教師集団の創意工夫や努力を意外と知らないのが現実でる。工夫や努力は当たり前と謙遜せず、遠慮しないで家庭や地域に伝えていこう。保護者や地域の人々の感謝の声が聞こえてこよう。

次年度の人事構想・異動に対応する

秋は異動に向けた動きが具体化するときである。新任校長は初めてのことで何かとわからないことや不安もあり、とかく後手に回る場合もある。近隣の校長や頼りにしている先輩、同期の校長、個人的な知人友人などのネットワーク図を作って、早めに情報を収集し、対応していくようにする。

人事の情報も待っていたのでは入ってこない。自分からネットワークを駆使して情報収集することが必要である。校内ではまず異動を希望している教師を把握する。周囲の学校で本校への異動を希望している者がいないか情報収集する。

こうした情報を踏まえながら、次年度の人事構想を立てる。人事については「入りたい人より入れたい人、残りたい人より残したい人、出たい人より出したい人」といきたいところであるが、相手や教育委員会があることからそううまくはいかない。「出したい人」を出しても同じレベルの教師が入ってくる(経験則)。出すか残すかは迷うところであるが、本人の希望と将来を熟慮し、校長の都合は二の次にして、子供・学校にとってよいと考える決断をすることである。学校経営構想にそって人事構想を立て、異動に取り組もう。

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