【連載】クオリティ・スクールを目指す 第87回 全国学力・学習状況調査の重要性

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

資質・能力向上に資する役割

今年の全国学力調査の結果発表はずいぶん遅れた。集計の一部にミスがあったせいであるが、教委によっては学校の分析にストップをかけるところがあって影響は大きかった。

一方、学力調査10年目ということで総括すべきという声がある。ただ注目すべきことはいくつかあって、例えば昨年に引き続いて上位県と下位県の平均正答率の差がさらに縮まっている。またかつて最下位だった沖縄県の小学校の成績が算数Aが上位に入るなどすべて全国平均を上回った。その他、新しく上位に食い込んだ県がいくつかみられる。興味深いことである。

こうした傾向は、10年続けた成果といえるのではないか。特に以前から悉皆調査ではなく、抽出調査にすべきという声があるが、一度行ったことがあったけれど、学校の不満が極めて大きかった。学力調査は自校が参加してこそ関心が増大するのである。学力向上についての全国的な関心の高さは悉皆調査だからである。

抽出調査の場合、学力の課題を国研等が発表しても各学校に伝わらないことが多い。研究者のレベルに留まることも多い。

そこで費用の問題があるなら、国語と算数・数学を隔年にすることは考えられるが、その場合も悉皆調査が断然望ましい。理科は3年に1度、近く中3英語を実施するとのことであるが、社会科なども実施すべきでないか。

さらに注目されるのは学力・学習状況の調査結果を学年の学力傾向のみでなく、個々の正誤や子供への質問紙の項目別に詳細なデータが学校に届けられることである。このデータの活用度は高い。学校によっては十分活用していない様子がみられるが、教委との連携も含めて活用度を高めるべきである。都道府県の平均正答率はあくまでも参考でしかない。必要なのは自校の子供たちの学力をどう高めるかである。

特に子供への質問紙には、次期教育課程論議で課題とされている、課題達成への意欲、問題解決への取り組み、自己学習力、対人関係能力、コミュニケーション能力、社会参画などが読み取れる項目がある。学力のみでなく、子供個々の資質・能力に関わる傾向を具体的に見いだすことで、教師が個々の子供への適切な指導を可能にする方略が生まれるのである。

とかく学力調査といえば、正答率のみに関心が集まり、無用な競争心を生み出す傾向がみられるが子供の成長を総合的な観点から把握するので、より豊かな教育実践に結びつけることが重要である。

その意味で、学力調査の実施の効果は大きく、新たな課題への対応としてさらなる充実が必要である。今後の調査の効果・効率性を高める方策に期待したいと考える。

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