【連載】クオリティ・スクールを目指す 第88回 「黒板」を生かす技術

教育創造研究センター所長 髙階玲治

電子黒板と共存し有効活用を

いつでもそうだが、授業を参観するとき黒板に目がいく。小学校では特に板書の文字が気になる。教科書体で美しく書かれているのに出会うとうれしい気持ちになる。

授業公開のときは、各教室を5分程度で走り回る。そんなとき板書を見て授業のプロセスを推測する。授業の良さが見えてくる。
だが、板書は子どもの思考過程を育てる重要な要因であるが、授業研究ではあまり話題にならない。

ところが、加藤昌男氏(NHK放送研修センター)の『ザ・黒板』(学事出版、2015)を読んで大変驚いた。何に驚いたかといえば、福岡教育大学には、2教室分の部屋の4面の壁に黒板があって、40人の学生が板書の練習ができるという。講座枠は40人だが、200人が抽選に並ぶという。黒板活用の講座は珍しい。
大学の講座では聞いたことがなかった。

しかし、面白いところに目をつけたものである。「書き方」や書道の時間に美しく文字を書くのを教えるが、日常の授業では黒板の文字で子供は学ぶ。その文字が下手では、子供は上手にならない。教師もまた教科書体を身につけるべきである。
最近、書くことの指導がおろそかになって、鉛筆の正しい持ち方ができない若者がずいぶん目につくようになった。

ともあれ『ザ・黒板』は面白い本である。
表題が示すように黒板のことなら何でもわかる。黒板の活用法や実践例、黒板の成り立ちなどの歴史。さらに小説に登場する黒板まであって、夏目漱石の『坊っちゃん』で冷やかしに使われる黒板は有名だが、宮沢賢治の『風の又三郎』にも登場するという。

そして最も興味を引くのは、最近の電子黒板の登場によって旧黒板は駆逐されるかどうかである。電子黒板はタブレットや実物投影器などと併用されることで授業展開を極めて豊かにするが、一方ではパソコンやスマホなどの普及によって「書く力」が著しく低下したといわれる。
その意味では、書いては消す、という単純だが効率的な黒板の役割を見直し、電子黒板との共存を考えるべきではないか、というのが加藤氏の考えである。

現状では、電子黒板の普及は一般的ではなく、多くの学校は旧来の「黒板」に頼らざる得ない。また電子黒板など機器の活用は使いこなせていないといわれる。
しばらくは旧来の黒板の活用を大事にしながら、電子黒板等の普及に応じて多様な活用方法を作り出していくことが必要であろう。
大切なのは授業の豊かな展開である。

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