【連載】教育現場の課題をひもとく 特別編 キーワードで読む「次期学習指導要領・審議のまとめ」(13)

監修 教育新聞論説委員会

 

移行過程と趣旨の正確な理解が必須

次期学習指導要領の特色を、12のキーワード、主要点として取り上げ、それぞれ、内容の概要や各学校で取り組むべき見通しを整理してきた。これら全体を見通した上で、主に学校運営を担う管理職が何をどのように準備しておけばよいのかをまとめてみたい。

◆ロードマップの作成と計画的な取り組み

最初に確認しておきたいのは、学習指導要領の告示から移行措置、新教育課程の全面実施に至る流れを、時間を追って確認しておくことである。新教育課程への移行と定着に向けたロードマップを作成し、それぞれの時期ごとに予想される課題と課題解決に向けた準備をしておく必要がある。

新学習指導要領が告示される平成28年度末から32年度小学校、33年度中学校の全面実施に至る期間は、移行措置の内容の理解とそれらの教育課程編成への具体化を進めることが求められる。またこの期間においては、新学習指導要領の考え方とそれを具体化した教育指導の姿を研修などを通じて、共有できるようにしておく。

特に、資質・能力の「三つの柱」を、教育課程の編成および各教科などの指導計画にどのように浸透させるのか、その道筋についての検討が必要である。さらに、学習指導要領の新旧対照表などを用いて、現行の指導計画と新しい指導計画とがどのような関係になるか、また新しく追加される事項については、内容の理解とともに、教材や指導方法の在り方について十分に検討しておくようにしたい。

◆新学習指導要領の正しい理解を

次に管理職として踏まえておきたいのは、新学習指導要領の趣旨とその概要について、正しい理解に努めることである。

新学習指導要領は、その構造も改革の内容も多岐にわたっており、細部にわたる理解にまでは行き届かない場合があるかもしれない。ただ、改訂の姿を「アクティブ・ラーニング」や「カリキュラム・マネジメント」といった単一の用語で単純化するのは、誤解を生む余地があり、新教育課程の趣旨の定着を阻むことにもなりかねない。

例えば、現行の教育課程の特色を語る際に、「言語活動」が引き合いに出される場合が多かったが、現行学習指導要領の特色は「言語活動」だけではない。理数教育の充実や伝統・文化学習の充実、道徳教育の充実なども改訂のポイントであった。改訂の趣旨を単純化しすぎないように留意したいものである。

中教審答申や学習指導要領の告示に伴って示される多様な資料の正確な読み取りを行い、どのような移行プロセスを準備するのか、プランを策定する。その際、校長・副校長・教頭だけでなく、教務や校内研究担当者も交えて、事前の学習を進めることが大切である。

◆教育課程の連続性を踏まえた準備

次に、上記では新教育課程への移行に向けたプランについて述べたが、教育課程自体は改訂を境に断絶しているものではなく、連続性の中にある点を踏まえた取り組みを進める。

翻って平成20・21年改訂では、学校教育法第30条の規定を受けて、総則に「学力の三要素」が示された。ただ、この三つの要素を、教育課程全体にどのように浸透させるのか、また各教科などの学習指導にどのように具体化するかという点について、学習指導要領において構造的に示されていなかったといえる。

今時の改訂は、この課題を克服し、学力の三つの要素を、各教科などの学習指導を通じて実現し、かつ教育課程全体としても達成することを企図している。資質・能力の三つの柱や各教科等の見方・考え方、さらにカリキュラム・マネジメントが強調されているのはこのような事情による。

そこで、全面実施に至るプロセスで、現行の教育課程の改善を目指す教育実践が、新課程の先取りになるよう、取り組みを進めたい。例えば、学力の要素の一つである思考力・判断力・表現力の育成が、各教科等の指導計画や教育実践にどのように具体化しているのか、その道筋を整理する。資質・能力の教育指導への具体化と調整の取り組みを進めることが、次期学習指導要領が求めている資質・能力達成型教育課程への円滑な移行を可能とする。

またカリキュラム・マネジメントは、改訂を待つまでもなく、現行課程でも実践できる。

(担当・工藤文三論説員)

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